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過去の報告はこちら 名前 10人以上 - 名無しさん 2017-04-05 22 44 36 シークエンス4メモリー3にて。カテリーナを抱えたまま中庭のようなところに出ようとしたところ、柵に引っかかってどうやっても出られない。 - 名無しさん 2013-05-25 02 08 24 旧市街で斧を使って戦っていたら、突然地上の真下に落下。エツィオの頭上を人々や兵士が歩いてる空間に入って出られなくなった。さらに驚くことに、その空間でのエツィオは水中で泳ぐアクションをしていた。旧市街の地上の真下には、広大な海?が広がっているらしい・・・。 - 名無しさん 2013-02-09 05 12 06 街中で、番兵が 4人 縦 1列でぼーっと立ってた。殴ったりアサシンブレードで刺したりはできたが、死なない。そいつらをターゲットに弟子を呼んだらフリーズした。 - 名無しさん 2012-11-09 19 12 10 現代編1でデスモンドが「今度は俺が下ろして〜」のところで女が何故か段差の下に落ちて、橋を下ろしたら女が喋るだけで動かなくなった。 - 名無しさん 2012-08-31 16 26 25 傭兵を雇って歩いていると、人々が娼婦を連れているときの反応をする。野郎どもに向かって「いいケツだな」とか・・・。 - 名無しさん 2012-08-24 16 14 01 仲間の見習いアサシンを呼んだら私服(非番?)の格好で登場。でもちゃんと仕事はしてくれた。 - 名無しさん 2012-08-23 16 16 55 被検体16号最後のパズルを解明後の現代編、デモ中にデズモンドが寝た姿勢のまま高速振動。「大丈夫だ、続けよう」とアニムスにめり込んだまま移動不可に。本当にそのままアニムスダイブを続ける羽目になった。ルーシーたちとの会話とかあったんかな? - 名無しさん 2012-08-19 17 16 38 半額中のダビンチのメモリー6中に印つけようとしたら居もしない兵に止められる謎の状態になってメモリーを再開かなんかでやり直したら武器・防具・所持金・絵画が全ロストした・・・意味わからん - 名無しさん 2012-07-31 18 20 47 馬からのエアアサシン失敗後、エツィオ空中浮遊。高度800m未だ上昇中。 - 名無しさん 2012-07-24 00 45 31
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ フーケは孤児院のことを思い出していた。 自分が貴族から奪った財産で子供たちを養っていた場所。 今はもうない場所。 ゴーレムの上から、銃の照準を合わせる。標的はルイズ・ヴァリエール。名門の娘。 フーケは結びつける。孤児院が襲撃された時、あの子は次々と殺されていく年下のきょうだい達を見てどんな行動に出たのだろう。 皆殺しにされ、自分が発見するまで野ざらしにされていた子供達を置いて一人連れ去られたのはどんな気持ちだっただろう。 「……ゼロのルイズ、って呼ばれていたわね。無能力のあんたがそれを扱ったって、焼け石に水だって分からない?」 眼下の少女が歯がゆそうに体を震わせる。ルイズもまたブレイズガンの銃口をこちらに向けている。フーケは結びつけてしまう。彼女とあの子のことを。 あの子は、今ルイズがムスタディオをかばっているように、皆をかばったのだろうか。 きっとそうに違いない。 決心が鈍る。彼女を救うために自分は鬼にならなければならない。 なのに引き金にかけた指は震えている。 「だったら、何だって言うのよ?」 ルイズがそう切り返してくる。 貴族然とした、堂々たる声だった。 「ブレイブストーリー/ゼロ」-21 ◇ 「だったら、何だって言うのよ?」 その言葉は虚勢だ、とムスタディオは思った。 彼女は興奮すると声が震える癖があるけど、今は毅然とした声音でいる。 なのにムスタディオは、小さな背中にそんな印象を抱いていた。 高級な舞台の上の、達者な踊り子を連想する。人前では決して仮面を外さず、誰かに何かを伝えるために演じるのだ。 ルイズは誰に、何を、伝えようとしているのだろう。 「ヴァリエール様、逃げろ」 そう言おうとしたつもりが、声が掠れてろくに言葉にならなかった。ルイズが流し目でこちらを一瞥するのが、ぼやけた視界の端に映った。 自分を見た瞬間、その表情にもう一枚仮面が重ねられたのも見えた。 不適に笑ったのだ。 「あんた、私たちを逃がすつもりはないでしょ。だったらここで逃げ腰になったりしたら、それこそ鹿狩りが始まっちゃうわ」 「へぇ、勇敢だねぇ。でもそれで何か変わるの?」 ルイズが無言で、ブレイズガンをぎゅっと抱き込んだ。華奢な体には無骨な銃は不釣り合いで、銃に構えさせられている格好になっている。 勇敢じゃない。無茶だ。 「ヴァリエール様」 今度は声が出た。 ムスタディオは太い荒縄みたいにぐにゃぐにゃになった腕で地面を掻き、体を起こそうとする。 「何よ」 「逃げ、てくだ」 「嫌よ」 にべもない反応。ムスタディオは上半身をなんとか起こしながら、そんなこと言わずに逃げてくれと思う。 単純な計算だ。 今彼女が飛びのいたなら、自分は弾丸の餌食になるかもしれない。それでも、彼女一人はタバサ達の助けを見込めるのだ。まだ生き延びられるかもしれない。 どの道、どう考えても自分は死を避けられそうにない。 ……そうか、オレ、死ぬのかと思う。 死にたくなんてない。最後の戦いの地で一度は覚悟した。それでも生き延びてみればやはり死ぬのは嫌だ。 それでも。 (アグリアスさん) 近しい女が死ぬのは、もう耐えられない。 「逃げろッ、ヴァリエール様!!」 血を吐くように叫んだ。 その懇願に返って来た返答は。 「――うるさい! 何よあんた、さっきから私がかばってあげてるってのに!」 ◇ ルイズは声を荒げた後にしまったと思ったがもう遅かった。ぐっと八つ当たり気味にフーケを睨む眼光に力を込める。 ルイズがここに立ちはだかっている理由。身も蓋もなく言ってしまえば、それは見栄だった。 本心は逃げたくてたまらない。 しかしそれは馬鹿なことではないと思う。 見栄のために動く。それの何が悪い。元々貴族の見栄と信念は表裏一体なんだ、と開き直って考える。そして信念とは信ずるに足る貴族像。自分の理想像だ。 信念は幾度も折れ続けてきた。ムスタディオがやってきて、一際大きく折れた。 ルイズは未だに、皆から認められたくてたまらない。同級生達から。教師から。家族から。そして一番認められたいのは。 そしてその努力を諦めた時。 「ルイズ・ヴァリエール」は根底から折れてしまうのではないか。 「あのね! 言っておくわ!」 ルイズは叫ぶ。 彼には知っておいて欲しい。 今はそんな状況ではないかもしれないが、やけだ。知ったことか。 「私はこいつを倒すし、あんたも見捨てないわ! いい? 私は魔法だって、ろ、ろくに使えないけど! それでも貴族なのよ! 貴族って言うのはね、魔法を使える者のことを言ってるんじゃないわ! 敵に後ろを見せない者のことを言うのよ!」 それが、私が信じる貴族の理想像だ。 貴方は誤解してる。 貴族は貴方が思うような存在じゃない。 ルイズは引き金を引く。 フーケもまた引き金を引こうとするのを、そのまなじりで受け止めながら。 ◇ その瞬間。 ムスタディオは意識の上を駆け巡るあらゆる感覚を忘れた。 動かない体の苦痛も、張り詰めた危機の空気も、フーケの嘲るような声も。 ルイズの背中には、先ほどまでは戦死した沢山の仲間達、好きだった女性の背中が重なっていたが――それも吹き飛んだ。 残ったのは、英雄達の既視感。 ――異端者の烙印を押されようとも戦い続けたラムザ。 ――その彼に「私はお前を信じる!」と言い放ったアグリアス。 ――信念を以って共に闘い抜いた貴族達。 絶望にまみれながらも誉れ高い、多くの背中。 「――うあああああああっ!」 ムスタディオは恥も外聞もない声を上げる。体が動く。抱きつけ。引きずり倒せ。盾になれ。引き金に力を込める彼女をかばえ。たとえ無駄な努力だとしても。 死なせるものか。 死なせてたまるものか。 ムスタディオの傷ついた体は、本人が思っているほど俊敏に動かない。 彼の手がルイズの体を掴む前に大きな衝撃が走る。 ムスタディオはもみくちゃにされて吹き飛んだ。 ◇ ……ぱり、ぱりと何かが砕ける澄んだ音があちこちで鳴っている。 まるで茂みの中で鈴虫が合唱しているみたいだ、とフーケは思った。しかしその季節にしては凍て付くような寒さだった。 「……、ぅ」 これはどういう状況なんだろう。 フーケは起き上がろうとし――全身がばらばらになるような痛みに息が詰まり、激しく咳き込んだ。しかしその痛みは我を取り戻させてくれる。 辺りは惨憺たる状況だった。 スクウェアクラス、いやそれ以上の使い手の氷魔法が炸裂したかのようだ。 森は凍て付き、木々はなぎ倒され、自分のゴーレムはというと――ガラスの人形を床に落としたように、凍てついたまま砕け散っていた。 氷が溶け始めているのか、あちこちで氷割の音が虫が鳴くように爆ぜている。 何が起こったのか、フーケは一瞬思い出せない。 自分が後手に回ったのは覚えている。 ルイズのあの言葉を聞いて、さらに逡巡が大きくなってしまった。 彼女は自分の信念に基づいて行動している。 自分は、自分の信念をどうしてしまっただろうか。 そんな迷いのために、引き金を引くのが遅れた。 「ぅ、く、」 思考がざらついて、頭が痛む。その後は。 (……まさか、この氷はあの銃の仕業だっていうのかい) 色々と思うことはあったが、フーケはとりあえずその一点に思考を絞った。 そうして心中に生じたのは驚きと。 歓喜。 あれがあれば、自分はきっと。 フーケはよろめきながら立ち上がる。 ナイフを鞘から抜き、 ◇ 空中で竜が旋回しているのを、ルイズは放心状態で見上げていた。 「……キュルケ、タバサ」 その竜の上に見知った人影を見止めた。キュルケが手を振っている。その表情が少しだけ必死だ。普段嫌っているキュルケの余裕のない顔を見て、ルイズはちょっとだけざまあみろと思う。 だけど何であんな顔をしているの、と思ったところでルイズは自分が寝ころんでいることに気づいた。 自分は立っていたはずだけど。立ってブレイズガンを抱えて引き金を―― 「!!」 がばりと上半身を起こす。体が痛む。やけに寒い。周囲の様子を見て絶句する。 「ムスタディオ!」 そして一番の心配を叫びながら立ち上がろうとして、後に誰かが立ったことに気づく。 「ムスタ!?」 振り返った先にあったのは――、フーケの顔だった。 「おとなしくしな!」 緊張の糸がぶちりと切れた。 悲鳴を上げようとした口を掴まれ、その腕が蛇のように首に巻きつきあっという間に抱き寄せられる。喉元に冷たい物が突き付けられた。 反射的に手に噛み付いたが、途端に首に鋭い痛みが走り、ルイズはひきつけを起こしたように固まってしまった。 心が、萎縮する。 「あんたらも降りてくるんだよ! ――そう、聞きわけがいいね」 瞬く間に事態が進行する。シルフィードが着地する。タバサとキュルケが手を挙げて背中から降りる。キュルケが何か悪態をついているが、内容を理解できるような心境ではなく、もう声も出なかった。 ただ、助けて、とルイズは思った。 今しがたまで自分が助けようとしていた使い魔の顔が、頭を占めていた。 ◇ 「あんたたち、動くんじゃない! 動いたらこの小娘の命はないよ!」 フーケは乱れ切った自分の呼吸を正せない。それは焦りと興奮によるものだ。 迅速かつ的確に、状況の天秤は自分の方へ傾いた。 両手を挙げたままの二人のメイジ、そしてその使い魔を睨み付けたままフーケはじりじりと移動し、転がっていたブレイズガンを空いた手で拾い上げた。 銃口を少女達に向ける。 「あんたたちに恨みはないけど、死んでもらうわ」 どちらを先に始末しようと考えて、どちらでも良いと思った。自分がブレイズガンを用いれば、とんでもない威力を発揮するだろう。竜は死なないかもしれないが、隣り合った二人の人間などひとたまりもあるまい。 そう考えてたまたま標的にした小さな少女が、何故か驚くほど平静でいることにフーケは眉をひそめた。 そして弾かれたように思いだす。 ムスタディオはどこだ。 「ムスタディオ! どこにいるんだい!? 姿を見せな!!」 フーケは叫びながら前しか見てなかった視界を急いで広げる。 その瞬間、自分と少女達以外に動く何かが掠めた。 それは砕けたゴーレムの残骸の中。 砕けた肩口に未だ固定された銃。 その無骨な兵器に、体を引きずるようにしてムスタディオが取り付いていた。 その手の甲に異様な輝きが灯っているのを見て取った瞬間、フーケの背筋が総毛立つ。 反射的にルイズを弾き飛ばした。 反対方向に跳んで逃げようとした彼女はしかし、ムスタディオの片手に刻印されたルーンの力を知らなかった。 光の筋が一直線に大気を貫く。 魔シンガンから発射された弾丸は、標的以外への衝撃波を最小限に抑え、フーケの脇腹に直撃した。 ◇ 魔シンガンを発射した瞬間に跳ね返って来た衝撃に、ムスタディオは耐えられなかった。 全身の骨が軋み、地面を転がった。 しかしのたうっていたのはほんの短い間で、すぐに細い腕に抱き起こされる。 「大丈夫、折れてるのは末端の骨だけ」 タバサ様。ありがとう、と言おうとしたが声にならなかった。 少し離れた場所では、ルイズもまたキュルケに助け起こされている。 「よかった、無事なのか……」 安堵するムスタディオの耳元で、タバサが囁く。 「フーケはあそこ」 「――――、」 見慣れた光景とはいえ、一瞬思考が止まる。 ルイズ達からさらに離れた位置に、フーケは転がっていた。 二つになって。 フーケの体は、胴体から真っ二つになっていた。 酸鼻極まる光景だ。思わずルイズとキュルケの様子を窺う。二人もまた息を呑んでフーケだった物を見つめている。 「――――――、――ぃ」 いや。 それはフーケだった物ではなく、フーケだ。 「んで、ぃ、ぃき、」 まだ上半身が動いている。手が空を掻き、獣のような息遣いが地面を舐める。 ムスタディオはタバサの手を借りて立ち上がると、よろめきながら落ちていたブレイズガンを拾い上げた。使い魔までもが固唾を飲んで見守る中、フーケのすぐ傍に立つ。 何か言おうかと思ったが、何を言えばいいか分からなかった。無言でブレイズガンを構えるとフーケと目が合った。 その眼は、殺されてたまるものか、とムスタディオを射抜いていた。 厭な汗が噴き出した。 これは呪いだ。生きたいと呪う。殺したいと呪う。渇望。 空気が冷たい。ブレイズガンのせいで冷えている、それだけではない。そんなはずはないのに酷い悪寒がする。 不意に目の前に霞がかかった気がして、ムスタディオは慌てて周りを見回した。煙幕が残っていたのかと思うが、違う。 暗がりを凝縮したような何かが、フーケの体から湧き出ている。 ムスタディオは引き金を引こうとしてたが、その前に。 ぴん、と何かが張り詰める音を聞き、 緑色の光が空間を貫くのを見た。 ◇ ――聖石の適合者よ、我と契約を結べ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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前ページ次ページZero ed una bambola ゼロと人形 「アンジェ、あのステアー何とかっていう鉄砲あったでしょ? あれだして」 ルイズは部屋に戻るなりアンジェリカに向かってそう言った。 「ルイズさん、弾がありませんよ?」 ステアーAUGの入ったヴィオラのケースを出しながらアンジェリカはそう言う。 「弾ならこの間買ってきたじゃない。ほら、デルフリンガーだっけ? あれと一緒に買ったわよ」 ルイズはアンジェリカに以前武器屋で購入した弾と火薬を手渡した。だがアンジェリカはそれを見て首を傾げる。 「これは使えませんよ?」 アンジェリカはルイズに弾と火薬を突き返した。 「え? でも鉄砲の弾ってこれじゃないの?」 ではどのような弾が必要かとルイズはアンジェリカに尋ねる。 「薬莢に入ってるやつです。ルイズさん、知らないのですか?」 「薬莢?」 ルイズはアンジェリカの言っている単語の意味が理解できないでいた。 「ねえ、どんなのがいいの? 見せて頂戴」 ルイズの問いにアンジェリカは困ったような顔を見せる。それもその筈、AUGの弾は全て撃ちつくし、薬莢もすべて捨ててしまったからだ。 どうしよかとしばらく悩むアンジェリカ。だが彼女はあることを思い出した。 「ルイズさん。M16はありますか?」 ルイズはアンジェリカに言われるままにM16を手渡す。 M16を受け取ったアンジェリカはマガジンを取り外すと弾を一発取り出しルイズに渡した。 「AUGの弾はこんな感じです」 ルイズは物珍しくそれを繁々と眺めた。 「アンジェ、これを使えばいいじゃないの?」 オスマンもこの鉄砲……M16を使っていいといっていたことを思い出し、ルイズはさも当然のごとくそう言ったのだ。 「ルイズさん、規格がちょっと違うので……使えないこともないと思いますけど、暴発したりジャムったりするかもしれません」 アンジェリカの言ってることがよく分からないルイズ。 「ジャムとか何か知らないけど使えないならそれを使えばいいじゃない」 M16を指差すルイズだが何やらアンジェリカの顔が浮かないようだ。 どうしたのかと声をかけようとしたがドアをノックする音に遮られる。 「ルイズ、そろそろ行きましょう」 キュルケがドアの外から呼んでいる。 「アンジェ、いいからそれ持って行きましょう」 ルイズはアンジェリカの手を引いてドアを開いた。 「ルイズさん、何処に行くのですか?」 アンジェリカの問いを聞いたキュルケは少し呆れる。 「ルイズ、説明してなかったの?」 ルイズはムッとしながらもアンジェリカにフーケの捜索に行くと伝えた。 Zero ed una bambola ゼロと人形 ロングビルは馬車の前でルイズたちを待っていた。しばらく待っていると彼女達の姿が見えてきたが一人見知らぬ女の子を連れているのが目に付いた。 「ミス・ヴァリエール。その子は?」 わからなければ本人に聞いてみるのがいいとロングビルはルイズに尋ねる。 「この子は私の使い魔のアンジェリカです。アンジェ、挨拶なさい」 ルイズに言われてアンジェリカは小さく頭を下げた。 「始めまして。アンジェリカです」 使い魔というルイズの言葉に少し驚きはしたが、すぐにアンジェリカが噂になっていた平民の使い魔だと思い出した。 「ええ始めまして。わたくしはロングビルです。この学院長の秘書をしています」 ロングビルは頬を少し緩めアンジェリカの頭を優しくなでた。 「そろそろ行きません?」 キュルケがルイズたちを急かす。 「そうですね。ところでミス・ヴァリエール。まさかこの子を連れて行くつもりですか?」 馬車に乗り込もうとしていたルイズは答える。 「もちろんそのつもりですけど…どうかしましたか?」 ルイズの返答にロングビルは眉をひそめる。 「相手はあのフーケですよ? 危険な任務に連れて行くなんて…」 ロングビルはアンジェリカを置いていくことを薦めた。 「大丈夫ですよ。それに何かあってもオールド・オスマンが貸してくれた鉄砲がありますし…」 そういってルイズはM16を掲げた。それを見たロングビルは息を呑む。何せ彼女が盗もうとして盗めなかったものの一つだったからだ。 「では仕方がありませんね。なるべく危険が及ばないように努力しましょう」 内心しめたものと思いながらアンジェリカの同行を許可したロングビル。三人が馬車に乗り込んだのを確認してから馬車の手綱を取った。 目的地までの道中ルイズたちはロングビルを含め雑談に興じる。 しかしアンジェリカは始終黙っていたままだった。 ルイズはそんなアンジェリカの様子にようやく気付いた。 「アンジェ、調子悪いの?」 ルイズはアンジェリカの顔を覗き込む。 「いえ…大丈夫です」 いつもと変わらない調子で言葉を返した。 「ミス・ロングビル。後どれくらいで着きますか?」 ロングビルは前を向いたままルイズに答える。 「もうすぐです」 馬車は鬱蒼とした森に入って行く。辺りは昼間だというのに薄暗く気味が悪い。 唐突にロングビルは馬車を止めた。 「あら? 目的地はまだでしょ」 キュルケはロングビルに聞く。 「ええ。ここからもう少し行った先に廃屋があります。ここからは徒歩で行きましょう」 一向は少し先にある廃屋を目指して歩いて行く。三人は先に廃屋を目視できるところに着いたのだがアンジェリカが少し遅れている。 「アンジェリカさん、大丈夫ですか?」 少しふらつきながらも追いついたアンジェリカだったが顔色が悪い。 「アンジェちゃん大丈夫? 馬車に酔ったのかしらね」 キュルケはアンジェリカを木の根元に座らせる。 「ミス・ロングビル。あの廃屋にフーケがいるのですか?」 ルイズはアンジェリカに構うことなくロングビルに情報を再確認する。 「ええ、あの廃屋に逃げ込んだということです」 ロングビルの言葉を聞いたルイズは手に持つ杖に力が入る。 「あの廃屋に行ってフーケを捕まえてきます」 ルイズはそう言葉を残すと廃屋へ走っていった。 「ちょっとルイズ! 待ちなさい! あ、ミス・ロングビル、アンジェちゃんを頼みますわ」 キュルケもルイズを追って行き、その場にアンジェリカとロングビルが取り残された。 本来ならロングビルはルイズたちを追うべきなのだが彼女の正体は土くれのフーケ。願ってもいないチャンスだった。ロングビル、いや土くれのフーケは笑みを浮かべる。 「アンジェリカさん。その鉄砲…M16だったかしら? 見せてもらえない?」 フーケは本心を悟られぬよう笑顔をアンジェリカに向ける。 そしてアンジェリカはそれを虚ろな目で見詰めた。 Episodio 24 Alle profondita della foresta… 森の奥へ… Intermissione 学院長室ではオスマンとコルベールが一人の生徒を待っていた。 コンコンというノックの音と共にタバサが部屋に入ってくる。 「おお、待っておったぞ。君に頼みがあるのじゃがいいかね?」 オスマンの問いにタバサは小さく口を開く。 「内容次第」 オスマンは話を続ける。 「先ほど土くれのフーケ捜索隊が出発した。メンバーは誰か知っておるかね?」 タバサは首を横に振る。 「メンバーはミス・ヴァリエールとその使い魔。そしてミス・ツエルプストーじゃ。ミス・ロングビルも一緒に行っておる」 名前を聞いたタバサの表情が険しくなる。 「それでじゃな、君の使い魔に乗って上空から彼女達を見守っていて欲しいんじゃ」 タバサには当然のことながら疑問に思う。 「何故?」 タバサの問いにはコルベールが答える。 「すまないが理由は教えられない」 タバサの顔がさらに険しくなった。 「もし彼女達が危なくなったら助けて欲しい」 理由もいわず虫のよい話だとコルベールは思う。 「わかった」 だがタバサはこの話を受け入れ部屋を後にしようとするのだ。オスマンはタバサの背中に向かって声をかける。 「スマンのう。報酬についてだが…」 「いらない」 オスマンの言葉を遮りタバサは言葉を吐き捨て、乱暴に扉を開けて部屋を出て行った。 「彼女には面倒をかけるのぅ」 「ええ、彼女の母親が大変なのに…」 オスマンとコルベールは呟いた。 「わしら大人は無力なものじゃな…」 前ページ次ページZero ed una bambola ゼロと人形
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【アニムス内】ロドリゴ・ボルジア(CV 山路和弘) チェーザレ・ボルジア (CV 諏訪部順一) ルクレツィア・ボルジア(CV 川澄綾子) ホアン・ボルジア ミケロット・コレーリア(CV: 藤原啓治) 【現代】 【アニムス内】 ロドリゴ・ボルジア(CV 山路和弘) テンプル騎士団総長にしてローマ教皇アレクサンデル6世(ゲーム内ではほとんど呼ばれないうえにアレクサンドル6世と呼ばれている)。息子のチェーザレが台頭してきたので影が薄く、そもそもエツィオと正面から争うのは避けたかった様子。 チェーザレ・ボルジア (CV 諏訪部順一) バレンティーノ公にして教皇軍総司令官(1500年3月に就任)。今作におけるエツィオのライバルであり、政治と軍事の両方に卓越した実力を有し、マキャヴェリも「覇王の素質がある」と絶賛している。独断で軍を率いてモンテリジョーニを襲撃しマリオを銃殺、カテリーナ・スフォルツァを捕縛。エデンの果実も奪った張本人である。 ルクレツィア・ボルジア(CV 川澄綾子) ロドリゴ・ボルジアの娘でチェーザレの妹。兄・チェーザレに兄妹以上の感情を持っている。 ホアン・ボルジア ロドリゴ・ボルジアの妹の息子でチェーザレ、ルクレツィアの従兄弟。チェーザレの兄弟などにも同じ名前の人物がいるが別人。ボルジア家の銀行家。一度見たら忘れられない格好をしている。 ミケロット・コレーリア(CV: 藤原啓治) 暗殺者。チェーザレの右腕。 【現代】 *
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前ページ次ページゼロのアトリエ ぼくのおしりはごつごつしてるから、さわってもちっともたのしくないよ。 でも、おんなのひとのおしりはやわらかくて、なんかいさわってもあきないんだ。ふしぎ! 「言いたい事はそれだけですか?」 「そうか、白か。だが、ミス・ロングビルには黒が似合うと思わんかね? モートソグニル。」 「オールド・オスマン!」 「なんじゃ?」 「何故このような行為を? このような行為は、その筋の女性のみを相手に行うべきだと思うのですが。」 「何故こんな事を、じゃと? 決まっておろう。」 「そこに尻があるからじゃ」 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師6~ 「たた、大変です! オールド・オスマン!」 学院長室のドアがガタン! と勢い良く開けられ、中にコルベールが飛び込んできた。 「なんじゃね?」 ミス・ロングビルは何事も無かったかのように座っていた。 オスマン氏は腕を後ろに組んで、重々しく闖入者を迎え入れた。早業であった。 オスマン氏の背中には靴痕らしきものが散見されたが、無視できるレベル。何も問題はなかった。 「ここ、これを見てください!」 コルベールは、オスマン氏に一冊の書物を手渡した。 「これは…『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。これがどうかしたのかね?」 「これも見てください!」 コルベールはヴィオラートの額に現れたルーンのスケッチを手渡した。 それを見た瞬間、オスマン氏の表情が変わった。 「ミス・ロングビル。席を外しなさい。」 ミス・ロングビルは立ち上がった。そして部屋を出て行く。 彼女の退室を見届け、オスマン氏は口を開いた。 「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール。」 掃除を命じられたルイズは、教室の惨状を前に途方にくれていた。 最初、ヴィオラートに全てを任せようとしたルイズだったが、 「あたしがひとりでやってもいいけど、そしたらルイズちゃんの評価が落ちるんじゃ…」 ヴィオラートの的確な突っ込みにより、ヴィオラートの掃除教室が開催されることになった。 「最初は、天井から掃除するのが効率的だよ。」 「そうなの?」 ホウキに乗って、天井のすすはらいから始めるルイズ。 「ちりとりはこうやって…そう、上手いじゃない!」 「そ、そう?」 貴族であるルイズは、掃除を褒められること自体は全く嬉しくないのだが、ヴィオラートの嬉しそうな顔を見ていると何だかそれだけで幸せな気分になってくるから不思議だ。 「これが終わったら、次は拭き掃除だよ。これで最後だから頑張ろうね。」 ルイズがめちゃくちゃにした教室の掃除が終わったのは、昼休み前になってからだった。 昼休み、ヴィオラートはルイズと別れ、使い魔さんたちの憩いの場へと足を向ける。 実は、朝食の時間に仲良くなった使い魔さんにちょっとした用事があるのだ。 「ギーシュ様…やはりわたくしとは…」 何かを思い出したヴィオラートは、座り込んでバッグの中を漁りはじめた。 「何を言うんだいケティ。僕が君の他に女性を愛するなんて…」 何か、視界の隅で面倒な事が起きているようだが、関係ないので無視する。 「わたし見たんです! 昨日、あなたがモンモランシー様と!…」 ケティは嫌々をするように、ギーシュ様とやらの胸を叩き始める。 そのためか、小瓶が転がり落ち、ヴィオラートの足元まで転がってきたようだ。 あんまり関わりあいたくない相手だけど、落し物なら返してあげなくちゃ。 「おーい、おとしものだよー!」 ヴィオラートが呼びかけると、ギーシュはひったくるように瓶を奪い、何事も無かったかのように取り繕った。のだが。 「ギーシュ様…まさか、それはモンモランシー様の香水…」 「な、何のことだい? 僕は別に、何も…」 ギーシュが言い訳を始めた瞬間。ケティの右手が一閃し、あたりにいい音が響く。 「どうか、どうかモンモランシー様には…こんな思いは…」 ギーシュの頬には、見事な紅葉が咲き誇っていた。 ヴィオラートはため息を一つつくと、やっと見つかったダグザの釜を持って立ち去る。 「待ちたまえ。君が軽率に瓶を拾ったおかげで、可憐なるレディを傷つけてしまった。」 ギーシュがヴィオラートを呼び止めた事で、なんだなんだと周囲の視線が集まる。 「ええー!? どう見てもあなたのふたまたが悪いよ!」 「その通りだギーシュ! お前が悪い!」 ギーシュの素行はある程度知られているのだろう、タイミングのいい横槍に笑いが巻き起こる。 「いいかい? 可愛らしいメイドさん。あの場合は、後でそっと届けてくれればいいんだ。」 「えー? そこまでする義理はないと思うし、それにあたしはメイドさんじゃないよ?」 「ふん…ああ、君はゼロのルイズが呼び出した、平民の使い魔だったな」 「…そうだけど。」 「ルイズの使い魔ごときにこまやかな心遣いを期待した僕が馬鹿だった。もういいよ、行きたまえ。」 「仲良くは…なれないのかな。」 ヴィオラートは釜を持ち直すと、使い魔さんたちのもとに向かった。 目をつけていた木の下に座り、ヴィオラートは釜から蓮花を出してかじり始める。 しばらくして、巨大モグラが土から顔を出し、中くらいの岩石をどさりと地上に置いた。 「わあ、見つかったんだ! やっぱりこの世界にも同じ鉱物があるみたいだね。」 実は、朝食の時に宝石を渡して探し物を頼んでいたのだ。 モグラは不思議そうにヴィオラートを見つめる。 そんなものを集めてどうするんだ? とでも言いたいのだろうか。 「へっへーん、これはね?」 ヴィオラートがバッグから何かを取り出そうとしたその時。 ようやくケティへのフォローを終えたのであろう、ギーシュが走ってくるのが見えた。 「ヴェルダンデ! 貴様、僕のヴェルダンデに何をする気だ!」 「え? え?」 「そのような卑怯者とは思わなかったが、このギーシュ・ド・グラモンに見つかったのが運のつきだ!」 「ち、違うよ!あたしはただ、探し物を頼んだだけで…」 「許してはおけない!」 ギーシュの瞳には、思慮の浅い正義感がありありと浮かんでいたので、 ヴィオラートは、ああ、この人は何というかしょうがない人なんだな、とだけ思った。 昼食を終えたルイズは、ヴィオラートを探していた。 (まったく、ご主人様をほうっておくなんて、ちょっと調子に乗りすぎじゃないの?) 「決闘だ!」 決闘? 物好きもいたものだ。まあ、どうせ女の子の取り合いだろう。それよりもルイズは、ヴィオ 「ルイズの使い魔とギーシュが、ヴェストリの広場で決闘だ! 何でもモグラの愛が賭かってるらしいぞ!」 吹いた。 「な、な、何やってんのよ! ももモグラの愛とか! いや、その、それ以前に決闘なんて!」 ルイズは、ヴェストリの広場へ向かう。 いろいろな意味で、ヴィオラートが無茶をしませんように、と祈りながら。 前ページ次ページゼロのアトリエ
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前ページ次ページゼロのアトリエ アルビオン大陸のサウスゴータ地方、シティオブサウスゴータと港町ロサイスを結ぶ街道の枝道。 普段は誰も通らないその枝道を、土くれのフーケが歩いていた。 顔や手足につけられた無数の傷、それに対する応急処置が未だ生々しい痕としてその姿を晒している。 「さて、あの娘は元気にしてるかね」 ようやく森の中の集落にたどりつき、フーケはいつものように遊んでいる子供達に挨拶した。 「よう」 しかし、帰ってきた答えはフーケの触れてはいけない傷に触れてしまう。 「マチルダのおばちゃん!」 フーケの全身が一瞬固まり、しかるのちにゆっくりと手が伸びて、 その許しがたい発言をした子供の頬が掴まれ、愉快な顔が形成される。 「私はまだ二十三よっ!言ってあったよねえ?今度言ったらコロスってさあ」 あまりの迫力に恐怖を感じたその子供は、驚愕に目を見開く。 「あーごめんごめん、お姉ちゃんちょーっとやりすぎちゃったかなー?」 穏やかな笑みを浮かべるフーケだが、子供は目の端にいっぱい涙を溜めて、 フーケが手を離すと同時に大声を上げて火のついたように泣き始めた。 「うえ゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!」 「あー…その、何だ…」 さすがに後悔して何とか泣き止ませようとしたフーケだったが、 あやせばあやすほど泣くばかりでちっとも要領を得ない。 泣き声を聞きつけたのであろうか、誰か一人、駆けてくる姿があった。 草色のワンピースに流れるような金色の光をのせて必死に駆けてくるその少女は、 まるで絵画の世界から飛び出してきたような、凄絶なまでの美しさを放っている。 その少女はフーケに気付き、花咲くように破顔してその胸に飛び込んだ。 「マチルダ姉さん!」 フーケの頬にかかったその耳が、彼女にエルフの血が混じっている事実を思い出させる。 「ティファニア」 フーケもようやく、外に向けての『土くれのフーケ』としての鎧を解いた。 「もう、マチルダ姉さんったらまた無茶したの?」 「ああ、ちょっとドジっちまってね」 傷だらけのその様子に、ティファニアは咎めるような調子で指をさす。 「だから使い魔を使ってってアレほど言ったのに」 「言ったろう?あんたの『お友達』が見つかるまでは、私も使い魔を使わない、ってね」 「もう、変なところで律儀なんだから」 ティファニアはマチルダ姉さんを心配して、ことあるごとに使い魔を使うように忠告してきたのだが… マチルダ姉さんは『自分が使い魔を召喚するのはティファニアの後』という幼い日の約束を守り続けている。 「けど、無事でよかった」 「使い魔が必要なのは私よりも、あんたの方だと思うけどねえ…」 「いいんです、何も憶えてないなんて、きっと大切な事じゃなかったんです」 マチルダ姉さんの勧めに、きっぱりと答えるティファニア。 ティファニアは、召喚したはずの使い魔と、使い魔に関する記憶を全て失っていた。 『マチルダ姉さん』とて、ただ、ティファニアの書いた一通の手紙で知っているだけだ。 『お友達』を召喚しようとしたら、平民を召喚してしまった事。 その左手に、見たこともないルーンが刻まれた事―――そしてその手紙の後、 ティファニアの使い魔などまるで初めから存在しなかったかのように消えてしまった事。 「私は、ただここでひっそりと生きていければいいんです」 「そうかい。まあ、私はあんたが良ければそれでいいんだけどね」 状況がそれを許してくれる限り、この娘には平穏の中で生きていて欲しい。 『マチルダ姉さん』は、柄にもなく始祖ブリミルとやらに祈りたい気分になった。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師24~ 「ちっ!」 不利を悟ったワルドが、ヴィオラートたちから距離をとり始める。 「今日の所は引こう。だが勝利を収めるのは我々『レコンキスタ』だ」 ワルドは素早く『フライ』のルーンを詠唱し、礼拝堂のステンドグラスをぶち破って…逃げた。 「逃がさないよっ!」 ヴィオラートが反応し神聖文字を飛ばすが、わずかに届かず…ワルドは、礼拝堂の外へと逃れる。 「おのれ!待て!」 ウェールズが後を追おうとするが、 「待ってください」 ヴィオラートがそれを引き留めた。 「ウェールズさんには、これから果たすべき義務があるでしょう?」 ウェールズは我に返り、ヴィオラートに向き直る。 「それに…『遍在』を追っても、あまり意味がないんじゃないですか?」 「そうだった。裏切りに目を奪われ、我を忘れていたようだ。礼を言う、ヴィオラート殿」 落ち着いたウェールズに、ヴィオラートは三つほどのケーキが入った袋を渡し、 「あたし特製のケーキです。何て言ったらいいのか、わかりませんけど…」 そこで言葉に詰まり、心の底から搾り出すように言葉をつむぎ出す。 「憶えてますから。それで、ちゃんと伝えますから」 ウェールズは悟りきった目線をヴィオラートに贈り、 「アンリエッタには、ウェールズは最後まで勇敢に戦って死んだと。そう伝えてくれ」 それだけ言い残し、ヴィオラートたちの元を去っていった。 これをもって、ようやくヴィオラートの策全体が完全なる終焉を迎えることとなる。 もしこのワルドが本体で、なおかつ十分な行動力を保持したまま捕まるような事があった場合、 ヴィオラートの嘘が証明される…このワルドが本体である事が証明される確率が万分の一でも発生する。 そのリスクを、ほんのわずかな綻びを作らぬために、ワルドはここで取り逃がす必要があった。 一度取り逃がせば、ヴィオラートが、ルイズが、ウェールズが次に会うワルドが本体であっても、 今現在取り逃がしたワルドが本体である事を証明する機会は永遠に失われる。 ヴィオラートの完全勝利が確定した瞬間であった。 「ルイズちゃん」 結婚式を挙げようとした婚約者が『遍在』で、皇太子の暗殺を企んでいた。 放心するルイズに、しかしヴィオラートは声をかける。急ぐ必要がある。 「ヴィオラート…」 ルイズは何もかもがないまぜになった顔でヴィオラートに振り返った。 「ルイズちゃん、色々お話したい事はあるけど、今は時間がないの」 「時間?」 本当は時間を取ってあげたいが、ここで時間をかけると全てが水泡に帰してしまう。 とりあえずルイズを生きながらえさせるために、ヴィオラートは渾身の力を込めてまくし立てる。 「そう。ワルドさんが敵で、罠を仕掛けたとすると、もうすぐ敵がやってくるんだよ」 「え?え?」 「だから、早く出ないと。アルビオンを」 「どうやって…グリフォンは使えないし、船はないし…」 「大丈夫!これがあるじゃない!この小ささなら、敵も見つけられないと思うよ!」 そう言って取り出だしたる物体は、ああ、見慣れたホウキとフライングボードではないか。 「え、いやでも、それじゃあアルビオンを出るなんて…」 「フライングボードはともかく、ホウキでこんな高い空を飛んだことはないけど…」 「ちょ、ないって、それじゃあまるで実験飛行ってことに…」 「大丈夫!あたしがホウキに乗るから、ルイズちゃんはフライングボードにつかまってればいいよ!」 「そ、そう言う問題じゃ…」 「滑空するだけなら全然問題ないよ!むしろ楽しいかも!」 ルイズの命を守る為、ヴィオラートは半ば強制的にルイズをフライングボードに乗せ、 思いっきり加速度をつけて押し出した。黄ばんだ部分を押されたフライングボードは勢い良く飛び出し、 あっという間にアルビオンの蒼空の中の黒い点となって消える。 「さて、あたしも行こうっと」 ヴィオラートはホウキに乗って思い切り駆け、そして飛んだ。いや、発進した。 「ひーーーーーーーーーーーーえーーーーーーーーーー」 「わー!たのしーなー!ねえ、ルイズちゃん!こんな体験めったに出来るものじゃないよ!」 人間の体感する速さではない…少なくともこの時代の人間が体感したことのない速さに、 完全に恐慌状態に陥るルイズと、レアな体験とばかりに大はしゃぎで、 見たものがそれだけで癒されるような満面の笑みを浮かべるヴィオラート。 「あっちがラ・ロシェールって街かな!樹が見えるよ!ねえ、ルイズちゃん!」 高揚するヴィオラートは、とりあえず相手が話を聞いているかどうかは関係ないようで、 見たものや感じた事をいちいちルイズに報告し始めた。 「いーーーーーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーー」 ルイズの悲鳴が、いつまでもアルビオンの空にこだまする。 「あら?」 「どうした?何かあったのかい?」 シルフィードに揺られ、アルビオンを目指していたキュルケは、 何か凄く速くて小さい桃色のものとすれ違った事に気付いた。 「ちょっと、あれヴァリエールじゃないの?」 「?」 そう言った時には既に、ルイズは空の彼方へと吸い込まれていた。 「何か小さい点が見えるけど…これじゃ何なのか判別できないね」 「何かあったのかしら。ヴァリエールだけがあんな…」 キュルケの発言を遮るかのように、今度は錬金術師の能天気な声が空から降ってきた。 「うわーい!皆来てくれた…」 全部言い切らぬ間に、そのホウキも遥か彼方へと消えてゆく。 「なんにせよ、合流した方がいいでしょうね…」 キュルケはタバサを促し、二人の消えた方角…ラ・ロシェールへと進路を向ける。 今回。ルイズは体を張って、二つの教訓を得た。 まず一つは、ヴィオラートの楽しいと他の人の楽しいはかなり違ったものである、という事実。 もう一つ、ヴィオラートには二度と逆らわないでおこう、という真理。 この二つの教訓はルイズの深い深い心の底に刻み込まれ、生涯上書きされる事はなかった。 前ページ次ページゼロのアトリエ
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直近の元ネタは、イギリスの新国旗のアイデアから。 英国労働党のある議員の「イギリスの国旗にウェールズ国旗の赤い竜も取り入れるべき」という発言を受け、 イギリスの有名新聞「デイリー・テレグラフ」が新しい国旗のデザインを募集した事がきっかけ。 しかし応募されたデザインの大半が日本の2ちゃんねらーが製作したアニメを元にしたネタ画像であり、 これを受けた同紙の記事では2ちゃんねるの熱狂ぶりを若干失笑気味に書いている。 この投票で2位に輝いたのがアニメ「ゼロの使い魔」のヒロイン・ルイズがイギリスの国旗を手に、 ウェールズの赤い竜に乗ったイラストである。 ニコニコRPGでは34話でこのルイズを乗せた赤い竜がラストダンジョンに登場。 ドラゴンつながりでファイナルファンタジーシリーズ最強の召喚獣・バハムートの「メガフレア」を放ってくるなど、 ラストダンジョンにふさわしい超強敵として登場する。 【対策】(オワタ、喰われを除く) HPが高く防御力 精神力がそれなりにあるので生半可な攻撃では倒せない。更に強力な全体攻撃を持っているかなりの強敵。 メガフレア、ドラゴンブリザード、虚無の魔法と3つも全体攻撃を持ち、特にメガフレアは1撃で全滅しかねない超威力。さらに、無属性なので耐性を付与して軽減することも出来ない。 虚無の魔法はさほど威力は無いものの吹き飛びの追加効果が厄介。だがたまに失敗する。 また怒鳴りによって釘宮病が発症してしまったらすぐに治そう。 捕縛などの行動不能系の状態異常で責めるのがいいだろう。減衰や倦怠も有効。 ステータス MHP MMP 攻撃力 防御力 精神力 敏捷性 経験値 所持金 5600 10 320 380 400 120 5900 2400 ○________ なぎはらえー | |\\ ||. .|| //| /イ | l\\\||. .|l///| ./// __ ィ ,. -――- 、 | | 二二二二二二二 !// / / ∟/ \. | l///||. .|l\\\|/ / / ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / ./ / / l l l lハ | |// ||. .|| \\l / ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / l从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V | | ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄ | イ ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\| / / | / ! ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ . \ / / \ / l. \\_____ivvvvvvvv| V. ( ( /Tえハフ{ V ‐一 '´ / __. -―=-` / / l l \! | / 入_.V/| >-ヘ \ ∨ ∧ ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ / / / l. l __ |\ l/V _{_____/x| (_| __ノ }ィ介ーヘ / ,.-‐ ' ´ / ____  ̄ ̄フ ∧ l )-ヘ j ̄} /| /___/xx| _Σ___/| | |V ノ/ ∠___ { / `< / \| { V /`7. /___./xXハ ( | ハ >' ____ 二二二二二二> / __ 〈. \_ |/ /___l XX∧ __≧__ / ∧/ `丶、 / { {____ハ } | ヽ /____|ⅩⅩ∧ __|__L.∠ ム' <`丶 、 `丶、 / \_____/ / | ', { |ⅩⅩⅩ ' __ ∧ l\ \ 丶、 ` 、 ∠ -――- ..____ノ / ノ } l ̄ ̄ ̄.|Ⅹ ' ,. '  ̄ / .// / V' \ ヽ `丶\/ / / ∧ { \ | .| ' / // / / ', l \ ヽ ,.-――┬ \ / 入ノ. ヽ く ヽ______7 ー―∠__ 〃 l / l l \V ヽ \ ,. '´`ー′ \ `< | { / | /〃 |/ __V/ ̄| ̄ ̄{_ \_ ` < \ `' ┴ヘ { .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' | / ノ`y‐一' >、_/ / ̄ 7丶、_ 丶 \ ヽ /`ー「と_し^´ | | } ム-‐' / / \_/ / / ヘ \ ヽ _>-ヶ--∧_} ノ j /` 7 ̄ ̄ ̄{ (  ̄ ̄`ー‐^ーく_〉 .ト、_ ', / 人__/ .ィ {__ノ`ー' ヽ 人 \__ { } | V 人__/ / | /  ̄{ ̄ >‐ ァ-、 \ 〉ー} j { / ./ ∨ __  ̄ ̄ -</ / ̄ ̄ 廴ノ ' <ヽ__ /し / < )__ \ _r‐く___/ / < ) \ {__ノ / Y__>一' / ___r―、_\ >' `ー' ,. ´ >.、 \__ノ { ∠二)―、 `ー‐┐ ∠ ∠_r‐--― <__ ∠ )__ \_ ∠)__ノ ̄`‐⌒ヽ__|> ∠)__r―――-― ..__{> ∠_廴,. ⌒ー'  ̄ \__{> ※「なぎはらえー」というセリフは、宮崎駿のアニメ映画「風の谷のナウシカ」の終盤で、女王クシャナが巨大生物兵器「巨神兵」(当たり前だがオベリスクのほうではない)を使役して敵の群れを破壊光線で一掃しようとしたシーンが元ネタ。 動画⇒★13 18~ この、バカ犬ー!!! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 08年7月には3期目のアニメ版も制作された人気ライトノベルシリーズ「ゼロの使い魔」のメインヒロイン。 「貴族なら魔法が使えて当然」という作品世界にあって、ルイズは名門公爵家の出身ながら全く魔法の才能(*1)を示せず、 「ゼロのルイズ」という蔑称をつけられていた。 しかしストーリーのある地点から伝説の魔法といわれる程希少な「虚無」の属性の持ち主である事が判明し、それに因んだ魔法を身につけるようになった。 ニコニコRPGではこの「虚無」の魔法を会得?(?の理由は後述)した状態で登場。 RPG本編でルイズが使用する「虚無」の魔法には吹き飛び属性がある事が確認されている。ただし時々失敗するようだ。 これは、劇中でルイズがしばしば魔法を試みては失敗し、意図せず派手な爆発を起こしてしまう(*2)ことからきているのだろう。 なお彼女は作中にて主人公であり彼女の使い魔である「平賀才人」に対し 好意を抱いているにもかかわらず素直になれないという典型的なツンデレキャラとして描かれており、 アニメ界においてもツンデレの代表格として崇められている。 なお彼女もまた貧乳をステータスとするキャラである(ただし本人はそれをコンプレックスにしている)。 中の人は釘宮理恵さん。彼女はルイズ以外にもツンデレキャラを多数演じている事から 彼女自身もツンデレ声優として人気。 彼女の声に魅せられた者は「釘宮病」の患者として病気認定されている。 その流れでニコニコRPGでも「釘宮病」の状態異常を発症させる。 関連動画 ちなみに「ドラゴンの技の効果が某うんこゲームと被った」という作者のコメントがあるが、 これは特定のゲームをけなしているわけではなく「うんこが漏れないように我慢しながらトイレへ向かうゲーム」のことだと思われる。 とはいっても、うんことドラゴンに直接関係があるわけではなく、なぜか当該動画の後半から始まるルイズやシャナとの脱衣バトルの方であろう。 こちらでも、ルイズやシャナのセリフによりパーティが釘宮病にかかっている。
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前ページ次ページゼロのアトリエ その日、ヴィオラートたちはシエスタの生家に泊まることにした。 貴族の客をお泊めするというので、村長までが挨拶に来る騒ぎになった。 最初は緊張して、必要以上に丁重な態度をとっていた両親だったが、私が奉公先でお世話になっている人たちよ、とシエスタが紹介するとすぐに相好を崩し、いつまでも滞在してくれるようにと言った。 久しぶりに家族に囲まれたシエスタは幸せそうで、楽しそうで、ヴィオラートは何だかシエスタがひどく羨ましくなってしまった。 兄は元気だろうか。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師30~ 砂時計の修理は、少なくともルーンの力を得たヴィオラートにとっては簡単だった。 固定化の呪文がかけられていたので、部品そのものは全て揃っていて、ほぼ完全な状態を保っている。 いつも通り赤いバッグの中から必要な道具を取り出して、ヴィオラートは砂時計の修理を試みる。 その日の夜半、竜の砂時計は早くも往年の輝きを取り戻した。 翌朝。完成した竜の砂時計をちらりと見て、キュルケが言った。 「あたしも行くわ」 しかし、ヴィオラートは黙って首を振ると、その申し出を否定する。 「この竜の砂時計で過去に行けるのは一人だけなんだ」 「そうなの?」 「それに、日時、場所、その限られた条件下でしかこの…時間を越える効果は発動できない。 それに日記にある…過去に行ったとされるのはあたし一人だから、あたし一人で行かないといけない。 でなければ、過去が変わって現在に思わぬ影響が出るかもしれない」 「そっか…じゃあ、あたしたちは先に学院に戻ってるわね」 そう言ってタバサを見たキュルケに、タバサはただこくりと頷いて答える。 キュルケとタバサは、一足先に魔法学院へと帰ることにした。 「…さて。じゃああたしは、これからエスメラルダさんに会わないといけないんだよね」 ヴィオラートはそう言って、シエスタに視線を向ける。 「は、はい?なんでしょう、ヴィオラートさん」 「この近くに、人気のない廃屋はないかな?何年も、人通りすらなかったような… エスメラルダさんだけが、通っていたような…」 「え?えーと…」 シエスタはちょっと考えて、記憶の糸を手繰り寄せた。 「たしか、森の中に私が生まれる前からあるっていう廃屋があったと思います…あそこなら、 祖母以外は誰も近づかないんじゃないでしょうか。そもそも危険だし、八年前には既に壊れかけてたらしいって」 シエスタがそこまで言うと、シエスタの父が言葉をついで答える。 「たしかもう何十年も前になりますか。元貴族の盗賊か何かが作った隠れ家だったって話ですが… まだ若かったうちのばあさんが追っ払いまして。まあ、めぼしいものはばあさんが取り返してきたし、なにしろ元貴族の盗賊が作ったものなんでどんな罠があるやら…壊すのも手間だし、今まで何となく放置されてるって感じですかね。 あそこなら、うちのばあさん以外誰も近づかないんじゃないでしょうか」 ヴィオラートは頷いて、シエスタに案内を頼んだ。 村からわずかに外れた森の中に、なるほど、たしかにそれらしい廃屋があった。 最後に人が入ったのは何年前の事だろうか、廃屋は既に朽ち果て、雨露さえもしのげないほどに崩れ去っている。 「ここが、例の廃屋です」 「うん。それじゃあ行ってくるね」 ヴィオラートはそう言って、朽ちた廃屋の扉を壊して開ける。 「え…これは!?」 その瞬間目に入った光景に、思わず動きを止めて、ヴィオラートは声を上げる。 床に、何回も何回も書き直された魔法陣が描かれていた。 「これは…そっか、エスメラルダさんが…でも…これじゃ、発動するわけないよね」 全く意味のない文字が大量に描かれているし、年月の為か、ところどころかすれて来ている。 さすがに、知識もなしに竜の砂時計の効果を発動させる魔方陣を再現するなど土台無理な話だったのだろう。 しかし、やらずにはいられなかった事は理解できた。わずかな記憶を頼りに、いつか帰れると信じて。 「でも…おかげで、どうすれば時間を遡れるのか、完全に理解できた」 ミョズニトニルンの力を得た今なら、竜の砂時計の構造やシステムと照らし合わせ、正しい文字や式を付け足して魔法陣を完成させることができる。 この日記に今、この場所が書き残されていたことも、やはり意味はあったのだ。 魔法陣を修復する作業を始めたヴィオラートを前に、シエスタが迷いながらも言伝を頼んだ。 「あ、あの、元気で…今も皆、元気でやってるって。それだけ伝えてください」 ヴィオラートは微笑んで、承った。 「うん。しっかり伝えるつもりだよ」 どのみち、エスメラルダとは初対面になる。 シエスタの名を出さないと、始まる話も始まらないかもしれない。それは予想していたから。 そして完成した魔法陣の上に立ち、ヴィオラートは砂時計を掲げる。 砂時計とルーンの光が共鳴し、数瞬ののち、ヴィオラートは跡形もなく消え去った。 「本当に…本当に、あの砂時計で、時間を越えられるんだ」 シエスタは呆然と、ヴィオラートの消え去った魔法陣を見つめていた。 八年前…過去に遡行したヴィオラートの目に最初に飛び込んできたのは他でもない。 ヴィオラート自身。そう、もう一人のヴィオラートの姿。 「あたしは…あなたから見て未来のヴィオラート、ってことになるのかな?」 未来のヴィオラート。そうだ、想定しなかったわけではない。 竜の砂時計をその手にした時から予測していた事態が、現にここに現れたのだ。 「具体的には…この世界から去って自分の世界に帰る直前のヴィオラート。だね。 確実に二人きりになれて、絶対に他の人にばれない、それでいて時間を越えられる…そんな条件の時はここしかないから、今ここで会ってる」 未来のヴィオラートは、ゼッテルを束ねた冊子をヴィオラート… 現在のヴィオラートに手渡して、言った。 「ここに、あなたの『今』からあたしの『今』までの出来事が記されてる。これを渡すためにあたしは来た」 現在のヴィオラートは、未来の自分の真意を量りかねて、ただ呆然と未来のヴィオラートを見た。 「あたしは…あなたは、『これ』を渡されて悩む事になる。そしてその選択の結果、あたしがここにいる」 「でも。これが、竜の砂時計を持つということ。時を越える術を手にした時に背負うもの」 そこまで言った未来のヴィオラートは、無言で過去の自分を見つめる。 現在のヴィオラートも、ようやくまともな平常心を取り戻して、未来の自分を見つめ返した。 「…あなたは、過去のあたしだから、これ以上の言葉を重ねる必要もないと思う。 でも、あたしが過去…今ここで、未来の自分に言われた事は言っておかなきゃいけない」 今ここで…この廃屋で、『未来のヴィオラート』もこれと同じ体験をした、という事だろうか。 「既にあたしがこうして介入したこの世界では、何もしないということは、何もしないという選択をしてることになるってこと。 『これ』を読まないことこそが、未来を書き換える事に繋がるという事」 「…わかってる。」 現在のヴィオラートはさすがに緊張して、震える手で紙束を受け取る。 「…あたしと同じ選択をしろとは言わない。でも多分、あなたもあたしと同じ道を歩む事になる」 未来のヴィオラートは後ろを向いてから、過去の自分に言葉を残した。 「それと…あたしが後悔してないって事だけは…教えておくよ」 それだけ言って、未来のヴィオラートは、砂時計の光の中に消える。 今現在を生きるヴィオラートは、無言で紙束を見つめ続けた。 十分すぎる時間が過ぎ去った後、残されたヴィオラートは小さな一歩を踏み出した。 エスメラルダに会うために、未来への一歩を踏み出すために。 竜の砂時計を持った者として、確かに一歩を踏み出したのだ。 外に出ると、日記に書かれていたとおり、廃屋の前に立ってエスメラルダを待つ。 こちらでも朝、陽はようやく南中の半分まで達したところだ。 しばらくすると、老齢の女剣士が歩いてくるのが見えた。 「…貴女は誰?」 「あたしはヴィオラート。錬金術師です」 ヴィオラートはそう答えると、日記と…竜の砂時計を見せた。 「そう…錬金術師が、ついに…」 既に頭部を白髪に覆われたエスメラルダは、 ようやく求め続けた錬金術師に巡り会えた深い感動に打ち震えつつも、言った。 「いつか…いつかめぐり合えると信じていました。このために私は…」 しかし、次いで出てきた言葉は予想通りの…いや、 既に決まっていたことを確認するかのような、澄みきった一言であった。 「私は既にこの世界の者。だから、戻ろうとは思わない。日記を見た貴女なら、わかってくれると思うけど」 それも予想していた答えだった。この日の後も日記が続いているという事は、彼女はここに残ったという事… エスメラルダは、まだ機能している廃屋の扉を開けると、中から粗末な箱を取り出して、ヴィオラートに手渡した。 「これが私が元の世界から…グラムナートから持ってきた全て。 できれば元の持ち主に返したかったのだけれど…あなたに渡しましょう」 かなり大きい箱だったが、ヴィオラートは中身を分散整理して、腰の秘密バッグに詰め込む。 「あら、それはあなたが作ったの?最近は錬金術も色々進化してるのね」 エスメラルダは初めて見る奇妙な道具に驚き、そしてその驚きそのものを懐かしみ、遠い目をして言った。 「私はこの世界に来て幸せだった。自信をもってそう言える。だから…」 「私は、ここにいる」 そう言ったエスメラルダの目には、深い充足と自らの辿ってきた道への自信が溢れていて。 だから、ヴィオラートは無言で、ただ微笑んで、シエスタの言伝だけを伝えることにした。 「シエスタちゃんがよろしくって…皆元気でやってるって。そう伝えてくれってだけ、言われました」 「あら、シエスタが?あの子、元気でやってる?」 「ええ、最近はあたしが錬金術を教えてるんです…ちょっと、引っ込み思案な所はありますけど…」 「シエスタが錬金術を…これも、何かの縁でしょうか。そう、あの子が錬金術師に…」 そこまで言ったエスメラルダは、何かを思い出したのか、真剣な表情に切り替わって話し始めた。 「…その…あなたがシエスタの…あの子のことを少しでも大切に思ってくれているというなら、話しておかなければいけないことがあってね?」 「何ですか?」 「あなたの…その、額のルーンにかかわることなのだけれど」 ヴィオラートは目を見開いて、エスメラルダを見つめる。 昇りかけであった陽は既に南中し、傾き始めていた。 魔法学院。錬金術工房の中で、ルイズが首を傾げつつ、戻ってきたキュルケとタバサを迎えている。 「ヴィオラートはどうしたの?」 ルイズの問いに、キュルケは「ちょっとあってね」とだけ答える。 「うーん、この『カリヨンオルゴル』が鳴らない原因を一緒に調べて欲しかったんだけど…」 「あら、調べるぐらいならあたしでも協力できるんじゃない?」 「貴女じゃダメ。第一、貴女って装飾品作ったことないでしょ?」 それもそうだ。キュルケは納得し、ルイズのことはヴィオラートに任せ、自分は自分の勉強に戻ることにした。 日が傾き、空が夕焼けに染まる頃、ようやく当のヴィオラートが姿を現した。 「ただいまー」 待ち構えていたルイズは、さっそくヴィオラートに質問をぶつける。 「ねえ、ヴィオラート。この『カリヨンオルゴル』が鳴らないのよ。ちゃんと作ったはずなのに…」 「そう。ちょっと見せてね」 ヴィオラートはそう言って、ルイズの作ったカリヨンオルゴルを手に取る。 そして、一旦カリヨンオルゴルを置くと、今度は何気なくルイズの傍に置かれた『始祖のオルゴール』を手に取り、何かに納得するように頷くと、言った。 「この『カリヨンオルゴル』は、特定の人にしか届かない音を出してるみたいだね。奏者って、聞いた事ない?」 「奏者?ちょっとわかんないかな…特定の人にしか届かないとか、それって一体全体どういう話になってるの?」 「そのうち…そうだね、あと三日もすればわかるから、その時話すよ」 何かを隠しているような、ヴィオラートの態度。 ルイズは少し不満げな顔をしたが、ヴィオラートの言う事ならばと納得し、 「じゃ、三日だからね?その時までに説明してよ?」 そう言って、期限の迫った詔をこねくりまわす作業を始めた。 「なにをしてるの?」 ヴィオラートの問いに、「詔」とだけルイズは答えて、途中まで何かが書かれた紙に向き合うが…羽ペンを持ったルイズの手は、一行たりとも進もうとしない。 「姫様の結婚式はもうすぐなのに…詔がまだ完成しなくて。いい言葉が思いつかなくて困ってるの」 「そうなんだ。ルイズちゃんなら大丈夫だと思うよ。頑張ってね」 ヴィオラートの気のない返事に、ルイズはちらりと視線を向けて言った。 「…ちょっと来なさい、一緒に考えてもらうわ。他に、話もあるし」 それからルイズは、ずるずるとヴィオラートを部屋まで引っ張っていった。 「じゃあ、とりあえず考え付いた分だけでも読み上げてみたらどうかな?」 部屋に着いたルイズは、こほんと可愛らしく咳をして、自分の考えた詔を読み上げる。 「この麗しき日に、始祖の調べの光臨を願いつつ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 畏れ多くも祝福の詔を詠みあげ奉る…」 それだけ言うと、ルイズは黙ってしまった。 「続けないの?」 「これから、火に対する感謝、水に対する感謝…順に四大系統に対する感謝の辞を、 詩的な言葉で韻を踏みつつ詠みあげなくちゃいけないんだけど…」 「韻を踏みつつ詠みあげればいいんじゃないの?」 とぼけた顔で言い放つヴィオラートに、ルイズは拗ねたように口を尖らせて言った。 「なんも思いつかない。詩的なんて言われても、困っちゃうわ。私、詩人なんかじゃないし」 「うーん、とりあえず、思いついたことから言ってみたらどうかな?」 ルイズは困ったように、頑張って考えたらしい『詩的』な文句を呟いた。 「えっと、炎は熱いので、気をつけること。風が吹いたら、桶屋が儲かる」 「えっと…この世界の詩って、そんななのかな?」 全く詩の才能がないらしいルイズはふてくされると、ぼてっとベッドに横になって、「今日はもう寝る」と呟いた。 ごそごそと着替え、ランプの明かりを消したあと、しばらく黙り込んでから、自作のベッドに潜り込んだヴィオラートを呼んだ。 「ねえ、タルブで何があったかって話」 「うん」 「キュルケもタバサも、はっきりと言わなかったけど」 ルイズはそこまで言うと、しばらく逡巡し、 「帰れるんでしょ?」 とだけ、言った。 「うん」 ヴィオラートも、必要最低限の回答だけをした。 「…」 黙り込んだルイズに回答を重ねるように、ヴィオラートが続ける。 「あたしは…もうすぐ、帰れるかもしれない」 押し潰されそうな沈黙が、ルイズの部屋を覆いつくす。 「私が行っちゃダメって命令しても、行くの?」 ヴィオラートは黙ってしまった。ルイズは、そうよね、とつぶやいた。 「ここは…あんたの世界じゃないもんね。そりゃ、帰りたいわよね」 しばらく、二人は黙っていた。 ヴィオラートは喋らないし、自分もそれ以上、何を言えばいいのかわからなくなったのだろうか。 ルイズはヴィオラートの反対側を向いて、目をつぶる。 「イヤね。あんたが傍にいると、私ってば何だか安心して眠れるみたい。それって頭にきちゃう」 そこまで言うと、限界を迎えたのか、ルイズは規則正しく寝息を立て始めた。 ルイズの寝息を耳にしながら、ヴィオラートは考えた。 この異世界で出会った人たちのこと…。 たった何ヶ月かの滞在に過ぎないが、色んな人たちに出会った。 意地悪だった人もいたけど、ほとんどの人は優しくしてくれた。 困ったことがあったら力になると言ってくれたオスマン氏。 自分の思惑はあるにせよ、ヴィオラートが自由に活動できるように取り計らってくれたコルベール。 毎日地面を掘り返して、菜園作りに大いに貢献してくれた上に材料まで調達してくれたヴェルダンデ。 人間じゃなくて剣だけど、頼りになる『相棒』デルフリンガーくん。 綺麗で賢しそうなお姫様、アンリエッタ。 勇敢で、それゆえに死んでしまった王子、ウェールズ。 無口だけど、心の中には人並み以上の感情を秘めたタバサ。 ルイズをからかいながらも、いつもそばにいるキュルケ。 ヴィオラートと同じ世界にルーツを持つ、黒い髪の女の子…シエスタ。 その祖母で、長い長い人生の末にこの世界に残る選択をした、エスメラルダさん。 そして、そばにいるだけでなんだか嬉しくなって、思わず顔がほころんでしまうご主人様。 桃色がかったブロンドと、大粒の鳶色の瞳を持った女の子…。 いつか帰ることは心に決めていた。 でも、本当に帰れる日が現実に見えてきた今、この人たちと… ルイズと、笑って別れることができるんだろうか? わからない。 でも…と、ヴィオラートは思うのだった。 優しくしてくれた人たちに、できる限りのことをしてあげたいと。 嬉しかった分だけ、親切にしてくれた人のために…せめてこの世界にいる間は、自分にできることをしてあげたいと思うのだった。 あとわずかの間に、自分にどれだけのことができるのかわからないけど。 とりあえず、ヴィオラートは寝ているルイズの頭をなでてみた。 寝ぼけたルイズは、むぎゅ、と唸って寝返りを打つ。 ヴィオラートは窓に差す二つの月の光を悠然と見つめ、故郷を想った。 前ページ次ページゼロのアトリエ
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エデンの果実 [Piece of Eden] このページはアサシンクリードシリーズに登場するエデンの果実(PoE)の来歴などについて判明している事実を掲載するページです。 はげしいネタバレを含みます。 削除などする場合は、コメントアウトで理由を書くなど、他編集者への配慮をしましょう。 コメントアウトする際は理由の併記もお願いします。 ■第一のリンゴ ■第二のリンゴ ■第三のリンゴ ■第四のリンゴ ■第五のリンゴ ■エツィオのリンゴ ■聖骸布 ■アンク ■杖 ■剣 ■水晶髑髏 コメント欄 ■第一のリンゴ +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) ナポレオン・ボナパルト(?~?) ハリー・フーディーニ(?~1926) テンプル騎士団(1926~?) +来歴 フランス革命 今までに判明しているこのリンゴを所有した人類の中で一番最初の人物は、後にフランス皇帝ナポレオン1世として君臨する事になる、将軍ナポレオン・ボナパルトである。しかし、彼がどの様にしてリンゴを入手し、どれ位の期間保有し、また最後にはリンゴを失ったのか誰かに渡したのかなどの詳細は一切不明である。 現代 ナポレオンの次にリンゴを所有したのが、脱出技で世界的に有名なハンガリー系アメリカ人の手品師、ハリー・フーディーニである。彼はリンゴの力を用いて、現代でもなお不可能とされる様々な奇術を成功させた。公式な記録では、フーディーニは「虫垂の破裂に因る腹膜炎」が原因で死亡したとされているが、被検体16号の隠された真実では、実際にはテンプル騎士団のエージェント(恐らくJ. Gordon Whitehead)によって暗殺され、リンゴを奪われたと言及されている。 その後このリンゴは、ジョン・フィッツジェラルド・ケネディの暗殺に用いられ、事件の真相解明を困難にさせた。 ■第二のリンゴ +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) アル・ムアリム(1191) アルタイル・イブン・ラハド(1191/9/?~1257) エリザベス一世(?~?) マハトマ・ガンディー(?~?) アブスターゴ社(?~?) +来歴 アサシン教団へ 第三回十字軍の折、十人のテンプル騎士達がイェルサレムのソロモン神殿内地下墓地に隠されたこのリンゴを発見。そして1191年、当時のテンプル騎士団総長であるロベール・ド・サブレがリンゴを我がものにせんと探索を始める。この再発見に際して、アル・ムアリムの名でも知られるアサシン教団の大導師ラシード・ウッディーン・スィナーンが、三人のアサシン(アルタイル・イブン・ラハド、マリクとカダールのアルシャイフ兄弟)を派遣してこれを阻止、アサシン教団の砦マシャフにこのリンゴを齎した。 アル・ムアリムは、アルタイルがサブレ暗殺に赴く間にリンゴを用いて、アサシンとマシャフの住民を洗脳、自身がリンゴの力に侵されたテンプル騎士である事を露呈した。彼は任務から帰ったアルタイルに対して、リンゴの力を最大限活用して抵抗を試みるも、殺害される。 アルタイルの手に アル・ムアリムがその死後もリンゴの力を利用して復活を遂げる事を恐れたアルタイルは、死者を火葬してはならないという教団の掟に反してまでもアル・ムアリムの遺骸を焼却、これに対してアサシン達からは賛否両論巻き起こったものの、かつての友にして過去に確執を抱えるライバルであったアッバス・ソフィアンはアルタイルに対して反感を強める結果となった。 この際アッバスは、大導師の書斎からリンゴを奪取してその使用を目論む。しかし、彼にはエデンの果実を操るだけの精神力が無く、リンゴは彼自身を含むアサシン達の生命力を奪い始めた。他のアサシンに比してリンゴに因る影響の小さかったアルタイルは、アッバスの手からリンゴを奪い返し、この惨事を収めた。アルタイルに救われた形のアッバスは自身の非を認め、教団はアルタイルの元に結束する事となる。 研究 この惨事によりリンゴの恐ろしさを身に染みて実感しながらも、アルタイルはその後の生涯の大半をリンゴの研究に費やし、教団の優位を確立する為に様々な新しい武器や技術を開発した。彼はキプロス島へテンプル騎士団を排除しに赴いた際にもリンゴを携行、密かにその研究を継続し、後に写本として伝わる文書を執筆した。 謀反 1217年、アルタイルとその妻マリア・ソープ、息子ダリムの三名は、チンギス・ハンを暗殺してモンゴルの脅威を退けるため旅立つ。モンゴルのアサシン、クラン・ガルの協力も受けた一行は任務を成功させ、10年の歳月を経てマシャフに帰還するが、アッバスはアルタイルの不在を良い事に、彼の次男セフを殺害、マリク・アルシャイフを投獄して後には彼をも殺害した。アルタイルの不在の間マシャフを率いていたマリクを投獄したアッバスは、教団を率いる新たな評議会を組織し、自身をその長に据えた。 帰還して息子の死を知らされると共にアッバスの叛乱に直面したアルタイルは、直ちにこれを鎮圧。追い込まれたアッバスはアルタイルに対してリンゴを渡す事を要求し、アルタイルは同じ過ちを繰り返し続ける彼を嘲りリンゴを差し出す。自らリンゴに触れる勇気のないアッバスは、取り巻きのスワミにこれを受け取らせる。そしてアルタイルに、スワミこそが彼の息子であるセフを殺害した張本人であり、更にスワミは殺害の際、セフに対して「これはお前の父アルタイルの指示だ」と偽りを告げていた事を教える。リンゴを受け取ったスワミは、リンゴを介してアルタイルの怒りを受けて錯乱し、マリアを殺害。その場から脱したアルタイルは、自らに以後20年間のアラムトへの追放を課した。 帰還 この20年間に彼は、リンゴの研究を更に進め、アサシンブレードに納める小型のピストルなどを開発した。追放を終えたアルタイルは、武力やリンゴの力ではなく自らの徳(ヴィルトゥ)を以てマシャフを奪還、開発したピストルを用いてアッバスを暗殺した。 再び教団を導く地位に戻ったアルタイルは、彼の書物を秘蔵するための書庫建設を命じた。その数年後、ダリムはヴェネツィアの商人であるニッコロとマフェオのポーロ兄弟と出会う。1257年には彼らをマシャフに招待し、彼ら兄弟は既に高齢のアルタイルから直接、アサシンとなるための指導を受けた。 訓練の数ヶ月後、マシャフはチンギス・ハン暗殺の報復を掲げるフラグ・ハン指揮下のモンゴル軍により攻撃を受ける。アルタイルは、ポーロ兄弟に蔵書の数冊、写本、彼の書庫を開ける鍵となる5つの印章を預けた。 モンゴル軍の攻撃を退けた後、アルタイルとダリム親子はマシャフの要塞に帰還し、アルタイルの書庫にて今生の別れを告げた。彼は自らの亡骸と共にリンゴを書庫に保管し、然るべき者だけがこの秘宝に触れられるよう計らったのだ。 ルネサンス期 16世紀初頭、当時アサシン教団の大導師であったエツィオ・アウディトーレが、アルタイルの書庫に収められた隠された真実を求めてマシャフへの旅路に着いた。 エツィオは、テンプル騎士団の妨害を受けながらも、コンスタンティノープルなどでアルタイルの印章を収集する事に成功し、遂に書庫へと足を踏み入れる。 書庫の中でエツィオが見つけたものは、彼が以前手に入れたものとは別の新たなリンゴであった。しかし、彼はこの秘宝に関わる事無く、そのまま書庫の中へ置いておく事を決意する。 エリザベス時代 経緯は定かではないが、その後このリンゴは16世紀の英国君主であるエリザベス一世の手元に移った。彼女はその治世に亘ってリンゴの力を統治に用い、彼女が全幅の信頼を寄せていた科学顧問の数学者であるジョン・ディーはエリザベス一世がアーティファクトを所有しているという事実に気付く。彼はプラハに住んでいる期間中にはそのリンゴを自身の手で使いさえした。 現代 現代に入ってからは、このリンゴはマハトマ・ガンディーの手に帰し、インドにおける対英非暴力不服従運動の熱心な支持者たちを獲得するために用いられた。ところが、テンプル騎士団はこの事態を察知し、1948年1月30日にガンディーを暗殺、秘宝を手中に収める事に成功した。 1963年の時点までに、テンプル騎士団は第一、第二の二つのリンゴを入手し、これらはどちらもJ・F・ケネディの暗殺に利用された。事件の際にケネディのリムジンを運転していたシークレットサービスのウィリアム・グリアは第二のリンゴの使用法を訓練され、大統領の死亡後には第三のリンゴを彼から奪取するよう指示を受けていた。 アブスターゴ社は、デンバー国際空港(DIA)の施設内で第二のリンゴの実験を行っていたが、DIA事件と呼ばれる衛星の打ち上げ事故によって秘宝を失ってしまう。 ■第三のリンゴ +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) ジョージ・ワシントン(?~?) フランクリン・D・ルーズベルト(?~?) J・F・ケネディ(?~1963) ウィリアム・グリア(1963) リンドン・B・ジョンソン(1963~?) +来歴 確認されている中で最初の所有者は、「隠された真実」の三番目のパズル内で示されているとおり、このリンゴをヨーロッパから新世界に持ち込んだフリーメーソンである。ジョージ・ワシントンは、建国の父にして合衆国初代大統領であると同時に、フリーメーソンのメンバーでもあった。彼はリンゴを後継者達に代々受け継ぐ事を企図し、実際にそうなったようである。後にはフランクリン・D・ルーズベルトの手に渡ったリンゴが、ウィンストン・チャーチル、ヨシフ・スターリンら指導者を結集し、第二次世界大戦に臨む“連合国”を形作るために利用されている。 第35代大統領であるJ・F・ケネディもこのリンゴを継承したが、テンプル騎士団は労働者階級により市民的自由を与えようとする彼の思想を危険視し彼を暗殺、リムジンを運転していたシークレットサービスの捜査官にこのリンゴを奪わせた。 この事件の後リンゴは、被検体16号がテンプル騎士団であるとして名前を挙げたリンドン・B・ジョンソンの所有となったようで、彼はリンゴの力を使ってアポロ11号を月面に到着させ、月にあった第五のリンゴをも手に入れる事に成功した。 ■第四のリンゴ +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) ニコラ・テスラ(?~?) トーマス・エジソン(?~?) ヘンリー・フォード(?~?) アドルフ・ヒットラー(?~1945) +来歴 10世紀 被検体16号によると、第四のリンゴは10世紀の中国美術に、小鬼の手に握られた火を放つ黄金の球として描かれているという。この絵画は火器を表現した現存世界最古のものであり、この球は初期の頃のグレネードの一種と考えられていた。この事が書かれた隠された真実には、"Sumerian Me 23"、つまり「神に与えられしシュメールの武器」となるバイナリーコードが隠されており、これこそが第四のリンゴを表していると考えられる。 現代 判明している範囲で、最初にこのリンゴを所有したのはニコラ・テスラである。彼は、故郷のクロアチアでこれを発見した。テスラが実験を開始し、無料で無制限の電力を供給しようと計画すると、テンプル騎士団は彼を妨害するためのキャンペーンを展開した。 トーマス・エジソンはJ.P.モルガンに対して、テスラの実験に対する資金提供を取りやめるよう要請する手紙を出し、その他の投資家にもテスラを避けるよう指示した。更にエジソンは、象のタプシーを感電死させることでテスラの電気が人を死に至らしめる危険があると主張する実験などで、テスラへの誹謗中傷を行った。その後、テンプル騎士団はテスラの実験室に侵入し第四のリンゴを強奪、それを彼の正気を奪うために使用した。 隠された真実は、その後このリンゴがエジソンの所有となり彼がそれをヘンリー・フォードに供与したことを示唆している。フォードはこのリンゴを用いて自社の組み立て工場で働く労働者を操っていたが、その後「as per instructions(指示に従って)」ヨーロッパのアドルフ・ヒットラーの元に輸送した。 ヒットラーは、ドイツが不況から脱して第二次世界大戦の主要国にのし上がる為にリンゴの力を利用した。また、彼はリンゴを影武者としても利用したと考えられる。彼はリンゴで作り出したこの影武者をバンカー内で自殺させ、自身は"C"(恐らくはウィンストン・チャーチル)に会う為脱出しようと試みたようである。しかし、アサシンらはこのバンカーを監視しており、本物のヒットラーを殺害、そして恐らくはリンゴを教団の物とした。なお、後の捜索ではバンカー内には一体の死体が発見されたのみであった。 ■第五のリンゴ +歴代所有者 テンプル騎士団(1969/7/20~?) +来歴 現代 第五のリンゴはテンプル騎士団に月面で発見され回収されたが、なぜそこに有ったのか、いつからそこに有ったのかは一切不明である。被検体16号によると、「something was up there, something abandoned long ago(その上には何かが、遥か昔に打ち捨てられた何かが有った)」。 合衆国大統領であるジョン・フィッツジェラルド・ケネディがテンプル騎士団に暗殺された後、副大統領であると同時にテンプル騎士であったリンドン・ジョンソンは大統領の座に収まった。ケネディの政策の多くが騎士団の指針に反していたという以外にも、彼がソビエトとの共同宇宙開発を目指していた事が彼の暗殺の主要な原因の一つだと考えられる。 アポロ計画は、リンゴを我が物にせんとするテンプル騎士団によって推進された計画だった。1969年7月20日、彼らはリンゴの回収に成功するが、現在のこのリンゴ状況は不明である。 ■エツィオのリンゴ +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) エツィオ・アウディトーレ(1488) カテリーナ・スフォルツァ(1488) チェッコ・オルシ(1488) ジローラモ・サヴォナローラ(1488~1498/5/23) エツィオ・アウディトーレ(1498/5/23~1499/12/31) マリオ・アウディトーレ(1499/12/31~1500/1/2) チェーザレ・ボルジア(1500/1/2~1501) レオナルド・ダ・ヴィンチ(1501~1502) ロドリゴ・ボルジア(1502~1503) エツィオ・アウディトーレ(1503/8/31~1506) デズモンド・マイルズ(2012/10/10) ウィリアム・マイルズ(2012/10/10~) +来歴 キプロスからイタリアへ 1486年、テンプル騎士団がキプロス島に向けて船団を派遣。1488年には、リンゴを積んでヴェネツィアに帰還した。 これを監視していたエツィオ・アウディトーレは、隙を見計らって兵士を殺害、彼の鎧を身に付けて仲間であるかのように装った。リンゴの護送に紛れ込んだ彼は、船団の主であるロドリゴ・ボルジアに接触し、仲間の協力も得つつ彼の暗殺を試みるが失敗。ボルジアは取り逃がすが、リンゴを奪取する事に成功する。 フォルリの戦い リンゴを入手したアサシン教団は、これを安全に保管するため、領主のカテリーナ・スフォルツァが教団に友好的であり頑強な要塞を備えたフォルリへとリンゴを運び込もうとした。しかし、フォルリに到着すると、ボルジアの命を受けてフォルリ内の写本の地図を狙うチェッコとルドヴィコのオルシ兄弟がフォルリを攻囲しており、カテリーナの息子と娘が敵の手に落ちていた。エツィオは彼らを救出するために、リンゴをカテリーナに預けた上で城を密かに出てルドヴィコを殺害、姉弟の救出に成功する。しかし、これはオルシ兄弟による陽動であり、エツィオ不在の内にフォルリは猛攻を受け、リンゴはチェッコに手に落ちる。即座にチェッコの追跡に移ったエツィオは、道中で彼を暗殺しリンゴを奪い返すが、チェッコは死に際にエツィオの腹部を短刀で刺傷する。意識が朦朧とするなか、エツィオはリンゴを取り落としてしまうが、これを僧侶のジローラモ・サヴォナローラが拾ってしまう。傷が回復したエツィオは、僧侶の左手の指が一本欠けていたことを手掛かりに、彼がジローラモ・サヴォナローラである事を突き止め、彼がいると思われるフィレンツェに向かう。 虚栄の篝火 1497年、フィレンツェに到着したエツィオは、サヴォナローラが市民を服従させフィレンツェの支配権を得るために、リンゴで有力者を操っていると知る。彼の支配を揺るがせるため、9人の支持者らを暗殺したエツィオは、暴動を起こした市民らを抑えるためにリンゴを用いようとするサヴォナローラに投げナイフを使い、リンゴを取り落とさせる。これをボルジア兵が即座に奪い取るが、追跡したエツィオが奪還に成功する。 ヴァチカン リンゴを持ってヴィラに帰還したエツィオは、写本を調べる事で、ボルジアの狙いが教皇が受け継ぐ教皇杖であると突き止める。 ボルジアを阻止するためにヴァチカンに単身乗り込んだエツィオはしかし、エデンの果実である杖の力の前に敗北し、リンゴを奪われてしまう。意識を取り戻したエツィオは、ヴァチカンの地下に隠された施設に逃げ込んだボルジアを追い、素手の戦闘で彼を倒すが、長年復讐の虚しさを感じていたが為に彼の息の根を止めはしなかった。 ボルジアが逃げ込んだ施設は宝物庫の入り口であり、その鍵はリンゴと杖、そして預言者であるエツィオ自身であった。宝物庫内でミネルヴァのメッセージを受け取ったエツィオは、伯父のマリオと共にヴァチカンを脱出、マリオはティベレ川にリンゴを捨てるようエツィオに決断を迫るが、彼は決断できず、リンゴはマリオが一時的に預かる事になる。 モンテリジョーニ陥落 こうして一旦はモンテリジョーニのヴィラにリンゴを持ち帰ったアサシン達だったが、1502年1月2日、教皇軍総司令官のチェーザレ・ボルジアが突如街を包囲。カテリーナ・スフォルツァの助けも受けつつ必死の抵抗を試みるアサシン勢だったが、教皇軍及びフランス軍の主力部隊を総動員したボルジア勢の前になす術はなく、リンゴとスフォルツァは敵の手に落ち、マリオ・アウディトーレは死亡、エツィオ自身も重傷を負ってしまう。 ローマでの戦い チェーザレは手に入れたリンゴをレオナルド・ダ・ヴィンチに与えて研究をさせていたが、父教皇のロドリゴは息子に知らせずにリンゴをレオナルドから取り上げ、郊外の聖ペテロ聖堂にそれを隠す。 4年の歳月を経た後、ボルジア家の内紛が元となりエツィオはリンゴを奪い返す事に成功する。 チェーザレが勢力を盛り返す事を防ぐため、エツィオはリンゴを用いて彼の基盤となる協力者達を次々と殺害した。それでもなお、チェーザレは残りの手勢を結集させローマ奪還を企図するが、総力をあげて立ち向かうアサシン教団とリンゴの力に敗れ、新教皇命で捕縛される。 だが、縄をかけられてなお自信を失わないチェーザレに不安を覚えたエツィオはリンゴの力で彼が牢から脱走する事を知る。 宝物庫に ナヴァラにてチェーザレを屠ったエツィオは、1506年、リンゴをコロッセオ地下の宝物庫内に封印し、二度と触れる事は無かった。 現代 2012年10月10日、アニムスを用いてリンゴの在り処を特定したデズモンド・マイルズ、ルーシー・スティルマン、ショーン・ヘイスティングス、レベッカ・クレインらアサシンは、数々の仕掛けを解明しとうとうリンゴの元へと辿り着く。しかし、デズモンドがリンゴに触れた途端、リンゴを通してジュノーが彼の身体を操り、アサシンブレードでルーシーの腹部を刺傷させてしまう。 ジュノーのコントロールから解かれたデズモンドは、昏睡状態に陥ってしまう。デズモンドの父であるウィリアム・マイルズのサポートを得たショーンとレベッカはデズモンドをアニムスに戻し、彼が昏睡から覚める事を祈ってニューヨークへと向かう。 ■聖骸布 +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) イアーソーン(?~?) ヨセフ(?~?) ダビデ(?~?) マルクス・ユニウス・ブルトゥス(?~?) ナザレのイエス (?~75) ジョフロワ・ド・シャルネー(?~?) マリオ・アウディトーレ(1454) ジョバンニ・アウディトーレ(1454) リナルド・ヴィッツィーリ(?~1498) ペロット・カルデロン(1498) ニッコロ・ピティリアーノ(1509~1510) フランチェスコ・ヴェチェッリオ(1510~?) バグッティアーニ家(?~1944) アブスターゴ社(1944~) +来歴 古代ギリシア 聖骸布が最初に文献に登場するのは、ギリシア神話の「黄金の羊毛」である。“奇妙な力”を持つとされるこの羊の毛皮は、イアーソーンとアルゴナウタイらがコルキスから奪い取ったものである。 中東 紀元前17世紀、ヘブライ人の祖であるヤコブは彼の息子であるヨセフに聖骸布を与える。創世記第37章3に登場する「長袖の着物」である。その後、紀元前11世紀にはダビデが巨人ゴリアテを倒す際に、聖骸布を用いて傷を治している。 マケドニア この後聖骸布は、古代ローマのアサシンらの手に収まることになる。ブルータスが紀元前44年にユリウス・カエサルを暗殺しその二年後に自殺をした際、彼の弟子のアサシンらは、マケドニア王国の都市フィリッピ(ピリッポイ)にて聖骸布を用いて彼の蘇生を試みる。 彼らはそれまでに聖骸布を用いたことが無かったのでその効果を恐れつつ使用した。彼らがブルータスの死体を聖骸布に包むと死体は目を開け、腕を動かし、一旦は蘇ったかのように見えた。しかし、彼は一切呼吸をせず、弟子たちの呼びかけにも応じることはなかった。そして、徐々に動きを止めていき、遂には“二度目の死”を迎えた。 救世主 聖骸布の所有者として最も有名なのはイエス・キリストことナザレのイエスであろう。彼が聖骸布を所有していると突き止めたテンプル騎士らは、紀元後30年前後に(ローマ帝国という偽装の下)彼を磔にし殺害した。しかし、彼の弟子たちは無事に聖骸布の回収に成功し、彼の遺体をそれで包み復活に成功する。 この後、聖骸布は長きに亘って歴史の舞台から姿を消す。 モンテリジョーニ 経緯は不明だが、聖骸布は14世紀頃にフランスのテンプル騎士であるジョフロワ・ド・シャルネーの手中に落ちる。しかし、モンテリジョーニのアサシンらは、これを彼の元から盗み出し、精巧な偽造品とすり替える。検証の末に、聖骸布の重要性を認識したアウディトーレ家のアサシンはこれを秘匿することを決める。彼は教会記録の改竄などを行った後、モンテリジョーニの井戸の水を排出し更に深くまで掘り下げた後、聖骸布を隠した。 マリオ・アウディトーレ 1454年にとうとう聖骸布の所在を突き止めたテンプル騎士団は、傭兵隊長フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロにモンテリジョーニを攻撃させたが、マリオ・アウディトーレはこれを撃退。敵のスパイであったルシアーノ・ペッツァーティから、今回の攻撃はモンテリジョーニ地下に埋められた何かを手に入れる為のものだったと知る。 マリオは歴史家と建築家たちを招集し、地下の秘宝に関しての記録を探したが、街の井戸についての漠然とした言及が判明したのみであった。 必死の探索の末、マリオと傭兵たちは井戸へと通じる道を発見する。しかし、そこはカミソリワイヤーなどのトラップが張り巡らされており、マリオ自身も振り子の罠から逃れる際、左目に重傷を負ってしまう。 傷付きながらも生き残った数人の仲間と共に最後の部屋にたどり着いたマリオが見たものは、簡素な木の箱一つであった。その時、一行は彼らの傷を癒してやると約束する声を聴くが、マリオは箱を開けることを禁じた。そのため彼らはマリオに襲い掛かり、傭兵隊長はその麾下の者たちを殺さざるを得なくなってしまう。 秘宝の力を恐れたマリオは、弟のジョバンニ・アウディトーレにこの箱を託しモンテリジョーニから遠ざけるよう依頼した。 アニャデッロ 1498年、アサシン教団の潜入員としてボルジア家を監視していたペロット・カルデロンは、監視対象であるルクレツィア・ボルジアと恋に落ちてしまう。遂には二人の間に子供が生まれるが、この男の子は障害を持って生まれ、余命数日だと宣告された。教団が保持している人を癒す能力のある秘宝について聞き知っていたペロットは、我が子を連れてアニャデッロへと赴き、聖骸布を守護しているリナルド・ヴィッツィーリの家を訪ねた。 忠誠を誓った血盟の兄弟たちを殺害しながらも、ペロットは息子の病を癒すことに成功するが、彼自身はその後教団の掟を破った咎で処刑される。この息子は、ジョバンニ・ボルジアと名付けられる。 ロニーゴ 1509年のアニャデッロの戦いの前後に、戦いの当事者の一人であるニッコロ・ピティリアーノが聖骸布を手に入れたとみられる。1510年、彼を暗殺し聖骸布を取り戻す為、アサシン教団からフランチェスコ・ヴェチェッリオが派遣される。 フランチェスコは彼の暗殺に成功したとみられたものの実際には彼はまだ死亡してはおらず、床下の隠し場所から聖骸布を取り出し、傷を癒すことに成功。歩くだけの力を取り戻したニッコロは燃え盛る荘園から逃亡を図るが、その道程で体力の完全回復をしようと改めて聖骸布を用いる。しかし、この際には聖骸布は彼の身体を癒すどころか破壊し、未完であったアサシンの仕事を遂げてしまう。 フランチェスコはこの一連の流れを予想しており、死に行くニッコロから聖骸布を剥ぎ取りロニーゴを去った。 ミラノ 第二次世界大戦末期の1944年のクリスマス、テンプル騎士団のエージェントは聖骸布であると主張される布を入手するため、ミラノのレストランへと派遣された。彼は多額の金を伴って、戦場を抜けてバグッティアーニ家の一人に接触を果たす。彼はそのエージェントに、木箱に入った折りたたまれた布を示した。 驚くべきことに、エージェントはアブスターゴ社の金属製のロゴのキーホルダーを布の上にかざすことで、彼の目の前で聖骸布の真偽を証明した。キーホルダーは振動を始めたのだ。 ■アンク +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) イシス(?~?) ローマ人墓泥棒(?~?) 商人(?~?) アクシピター(?~?) アクイルス(?~?) ルシウス(?~?) カイウス・フルヴァス・ヴルトゥア(?~?) アクイルス(?~?) ローマ兵(?~?) ヴァレリア(?~?) +来歴 古代エジプト アンクは元来、エジプトで女神とされるイシスが歴代のファラオを保護するために用いられてきた。しかし、彼女が慕っていた兄オシリスが逝去し、彼女は悲嘆に暮れ、アンクを彼の復活のために用いてしまう。秘宝の力でオシリスは復活を遂げるものの、それは一夜限りの生であった。互いに愛し合っていた二人は残された時間で性交渉を行い、その結果イシスはホルスを身籠る事となる。 ローマ帝国 200年の後、アンクはローマ人の墓泥棒によってピラミッドから発掘され、商人に売り飛ばされる。その後アンクは、数多の手を経て帝国の首都ローマへとたどり着く。 ある時点で、アンクはアラマンニ人アサシンのアクシピターの手に渡る。彼は秘宝をアクイルスに、アクイルスは更にルシウスに秘宝を渡す。ルシウスはアンクを箱に施錠して保管するが、その日にテンプル騎士団のスパイであったカイウス・フルヴァス・ヴルトゥアによって殺害され、アンクは奪われてしまう。 後にアクイルスはカイウスをローマで暗殺した際にアンクを取り戻し、妻のヴァレリアと共にその研究を進める。しかし、彼らはローマ兵によって捕縛され、アンクも彼らによって接収されてしまう。アサシンの協力者であるアクシピターが彼らの護送行列を襲撃した際、ヴァレリアはアンクを取り戻すことに成功。アクシピターの要請もあり、彼女はアンクを隠しておくこととした。 ドイツ 14世紀前半、「ブラザーズ・オブ・クロス」を名乗る集団(テンプル騎士団の組織)がヨーロッパ中を巡って、ペストからの保護を謳って賛同者を集めていた。ドイツ人アサシンのルーカス・ツァーブルグは、彼らが中央ヨーロッパに隠されているというアンクを探しているのではないかという疑念を持ち、調査を行う。 1350年、ブラザーズ・オブ・クロスはルーカス・ツァーブルグ共々その姿を消し、二度と歴史の表舞台に立つことは無かった。 ■杖 +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) モーゼ(?~?) 歴代ファラオ(?~?) アレキサンダー大王(?~BC323) 洗礼者ヨハネ(?~?) 歴代ローマ教皇(?~1499/12/28) アレクサンドル3世(?~1888/10/29) ニコライ・オレロフ(1888/10/29) アレクサンドル3世(1888/10/29~1894/11/1) ニコライ2世(1894/11/1~?) グリゴリー・ラスプーチン(?~?) テンプル騎士団(?~?) →破壊(1908) グリゴリー・ラスプーチン(?~1914) ニコライ・オレロフ(1917~?) +来歴 モーゼ 記録上最古のエデンの杖の使用は、モーゼによる紅海の“分断”である(実際には彼は杖の幻惑効果を用いて出エジプトを果たした)。 ファラオ 紀元前7世紀の古代エジプトでは、ファラオのシャバタカが臣民の統治の為、エデンの杖を用いていた。恐らくは、彼の前後のファラオたちもこの杖を統治に用いていたと考えられる。 アレキサンダー大王 紀元前4世紀ごろ、テンプル騎士団は何らかの手段でエデンの杖を入手。彼らは秘宝を盟友のアレキサンダーに委ね、彼はそれを用いて歴史上もっとも巨大な帝国の一つを築き上げていく。彼はBC323年にアサシンのイルタニによって毒殺された際、この秘宝を失ったものとみられる。 洗礼者ヨハネ その後この杖は、預言者にして宗教的指導者である洗礼者ヨハネの手に渡る。 教皇杖 ヨハネの杖は、後にキリスト教会を創設し初代教皇に就任することとなる、イエスの第一使徒の聖ペトロのものとなる。これは代々のローマ教皇に受け継がれ、アレクサンデル6世ことロドリゴ・ボルジアの手中に収まるまで続いた。 1499年12月28日、エツィオ・アウディトーレがシスティーナ礼拝堂に潜入。ロドリゴと対峙し彼を倒した後、杖はリンゴと共に 宝物庫 への鍵として利用された。この際、杖はそのまま 宝物庫 入口の地下へと格納され、「人の手にあるよりも、むしろ地に委ね」ることとなった。 皇帝笏 1888年までの時点で、杖はロシア皇帝アレクサンドル3世によって回収され、ロシア帝国全域にツァーリの威光を広めるため用いられた。 同年10月29日、ペトログラードへの帰路にあったツァーリは、アサシンのニコライ・オレロフの襲撃を受ける。皇帝列車は脱線し、皇帝は襲撃者に対してエデンの杖を投げつけ、それを使って戦うよう挑発した。オレロフはPoEの力とアサシンの技巧を駆使して戦ったものの、体格差のある皇帝に打ち負かされ、杖も置いたままほうほうの体で逃げ出す。 アレクサンドル3世の死後、杖は彼の息子のニコライ2世に継承されるものの、彼はその力について知らされていなかった。テンプル騎士団の一員であり、ロシア皇室に巧みに取り入ったグリゴリー・ラスプーチンは、密かにこの杖を盗み出し、ツングースカのテンプル騎士団研究施設に運び込んだ。 1908年夏、アサシンの一人がニコラ・テスラに対し「テンプル騎士のトーマス・エジソンに評判を貶められた報復の機会を与える」と提案した。テスラはウォーデンクリフ・タワーと彼の電気技術の知識を用いて研究施設に歴史上もっとも巨大な爆発の一つとされるツングースカ大爆発を引き起こした。この爆発により、杖は研究施設もろとも破壊された。 しかし、杖の方は完全に破壊されたわけではなく、少なくとも一つの破片がラスプーチンの手に渡り、ニコライ2世の皇后であるフョードロヴナを操るために用いられた。1914年、ラスプーチンはアサシンによって暗殺され、この破片は彼と共に埋葬された。1917年、ツェサレーヴィチからこの破片の存在を聴いたオレロフは、ラスプーチンの墓を掘り起し、この破片を取り戻した。 ■剣 +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) ペルセウス(?~?) アッティラ(?~?) アーサー王(?~?) シグムンド(?~?) ジャンヌ・ダルク(?~1431/5/30) テンプル騎士団(1431/5/30~) +来歴 デミゴッド かつて来たりし者たち以外で最初にエデンの剣を使用したのは、ギリシア神話の半神の英雄ペルセウスである。彼はゴルゴンのメデューサを倒すためにこの剣を用いた。 神の災い 5世紀ごろ、羊飼いが地中から発見し剣はフン族の王アッティラの所有となる。彼は剣を用いて帝国を拡大し、ユーラシア大陸を恐怖に陥れた。このころから、エデンの剣は「軍神の剣」や「アッティラの剣」として知られるようになる。 永遠の王 5世紀後半から6世紀初頭ごろ、アーサーは石からこの剣を抜き、エクスカリバーと名付けイングランド王となるために用いた。 グラム 恐らく6世紀後半、乞食に扮したオーディンが大樹バルンストックに剣を突き刺し、「抜く事が出来た者に褒美としてやる」と告げる。その場にいた勇士たちは全員剣を抜こうと挑戦するものの誰も抜く事が能わなかったが、唯一人英雄シグムンドのみが抜く事に成功する。 蒼き狼 13世紀、モンゴルの武将チンギス・ハンは諸部族を統一して造ったモンゴル帝国を率いて大規模な西進を続けていた。レバントのアサシン教団を率いる大導師であったアルタイル・イブン・ラハドは、ハンが何らかのエデンの果実、恐らくはエデンの剣の所有者ではないかと疑いを抱く。1227年、アルタイルの息子ダリムとモンゴル人アサシンのクラン・ガルはハンの暗殺を果たすが、結局の所彼の力の源泉が剣であったのかどうかは分からず終いであった。 オルレアンの乙女 百年戦争の最中、フランスの百姓の娘であったジャンヌ・ダルクが剣を見つけ、その所有者となる。彼女はフランス側で参戦し、イギリスに対して数々の勝利を収める。しかし、1430年に彼女はブルゴーニュ軍によって捕えられ、イングランド軍に引き渡されてしまう。テンプル騎士団は彼女を火刑に処し、彼女から剣を奪い取ることに成功する。 ■水晶髑髏 +歴代所有者 かつて来たりし者たち(?~?) テノチティトランの神官(?~?) ジョバンニ・ボルジア(1520) ボンバトゥス(1520) ジョバンニ・ボルジア(1520~1542) アブスターゴ社(?~) +来歴 ルネッサンス 1520年、エデンの果実捜索のためエルナン・コルテスの事業に派遣されたアサシンのジョバンニ・ボルジアが、水晶髑髏の一つの位置を特定する。アステカの首都テノチティトランの神官が人身御供の儀式に用いていたものを盗み取ったのである。 これをヨーロッパに持ち帰った彼は、エデンの果実の専門家である科学者のボンバストゥスに託す。彼はいくつもの試験を行いこのPoEの謎を解明しようとしたが、結局目的も機能も判明せず、血盟の兄弟たちはこれをただの装飾品であると判断し、忘れ去った。 それにも関わらず、ジョバンニは毎日最低一時間はこの骸骨を眺めるという独自の研究を22年間続けた。そして、1542年に遂に中国人の男がもう一つの骸骨を用いて彼と交信を行い、水晶骸骨は通信機能を持っていることが判明した。 現代 2012年の段階で、複数の水晶髑髏がアブスターゴ社の手中にある。同社CEOのアラン・リッキンはウォーレン・ヴィディック博士宛のメールで「ミッシェル・ヘッジスの通信機」は実際に機能することが確認されたが、数が限られている事に言及していた。 テンプル騎士団は、水晶髑髏をアサシンたちが傍受不能な完全にセキュアな通信回線として用いることを企図している。絶対数が極めて少ないため、騎士団の中でもとくに重要な施設や人物にのみ配給される予定である。 コメント欄 過去ログはこちら あのリンゴが洞窟の入り口の正統なカギのように見える - 名無しさん 2012-11-25 17 01 23 メール内でジュノーが捨てたって言ってた円盤って、レディリバティに出てくる予言の円盤のことか? - 名無しさん 2012-11-27 12 19 21 そうだよ - 名無しさん 2012-12-11 00 26 27 聖杯、聖槍、聖櫃あたりもエデンの果実なのかな?、 - 名無しさん 2012-12-09 11 25 28 少なくとも聖杯は、アブスターゴCEOのアラン・リッキンが「恐らくPoEじゃないから探索中止」ってウォーレンにメールしてたな。他のキリスト教系PoEも偽物だろうって。まぁメール自体がデズモンドに見せるための偽情報の可能性も有るけど。あと、アークは1で出たやつじゃない? - 名無しさん 2012-12-09 22 34 02 聖骸布なんてモロにキリスト教系なのにPoEだからフェイク情報だろうね - 名無しさん 2012-12-11 15 26 46 いや、既に発見されてるやつは当然含まれてないよ? 骸布はとっくにアブスターゴが回収済みだからね。 - 名無しさん 2012-12-11 17 04 47 聖骸布がガセって意味でなく、ほかのキリスト教系PoEが偽~って情報がフェイクってことじゃない? - 名無しさん 2012-12-11 19 33 06 そうだよ。そんで、そのフェイクだとする根拠が「骸布は本物なのに、キリスト教系PoEは偽物って言ってるから」という事だから、俺は「いや、アラン・リッキンが言ってるのは探索中のPoEに関してだから、骸布が本物でも、キリスト教系PoEが全部偽物って情報が嘘とは限らないよ」って言ってる訳。話がややこしくて分かりづらいけど、意味通じた? - 名無しさん 2012-12-11 23 36 28 狂気の館で飾ってある肖像画の男、左手にリンゴ抱えてるよね。誰だろう? - 名無しさん 2012-12-25 21 52 00 ルイ・ハッチンソン肖像画。ゆえにハッチンソン本人でしょう。 - 名無しさん 2012-12-26 09 55 20 金属を跳ね返すというだけのPoEを後生大事に守ってただけの端役(しかも4人の内の一人)が、なんでリンゴを持ってたんだろう? - 名無しさん 2012-12-26 15 19 07 それはキッド船長では?>POEのかけらを所有 - 名無しさん 2012-12-26 20 43 01 キッド船長が所持してて、4人の手下が守ってたでしょ? - 名無しさん 2012-12-26 22 09 00 4人の手下の名前:ラッキー・レム アベル・オーウェンズ ジョセフ・パーマー ヘンドリック・ヴァン・デア・ホウル です。ルイ・ハッチンソンはキッド船長の手下でないどころか、面識さえ恐らくないのではないでしょうか?(キッド船長の手下の名前はデータベースより参照) この件に関しては、気になる話もありますが、自分が知っているものが確証高いものなのか、はたまたユーザーが創作したものなのか判別できかねますので、このPOEがどのようなものなのかに関してなど質問されても返答に応じかねることだけはご了承ください。 - 名無しさん 2012-12-26 22 58 20 名前
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前ページ次ページゼロのアトリエ ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師29~ 魔法学院の片隅、空き教室を利用して作られた錬金術工房の中で。 ルイズは一生懸命設計図とにらめっこして、カリヨンオルゴルの製作にいそしんでいた。 周りでは、他の五人がめいめいの作業に精を出している。 ルイズは手を休め、結局ものにならなかったかつての趣味の事を思い出した。 魔法が駄目ならせめて器用になるようにと仕込まれた編み物であったが、 複雑に毛糸が絡まりあったオブジェを無駄に生産するだけに終った。 天はルイズに編み物の才能は与えなかったようである。 だが…不思議とこれが金属や宝石となると話が変わってくる。 自分でも驚きだった。自分にこんな細やかな細工を作り上げる力があったなんて。 錬金術…いや、自分の才能に気付かせてくれたヴィオラートには本当に感謝している。 そんなことをつらつらと考えながら、ルイズはふと『始祖のオルゴール』に目を向けた。 そういえば、結婚式の詔も考えなくてはならない。 以前は…無能と蔑まれた時には暇を持て余していたというのに、 自分が何かをなそうと足を踏み出した瞬間から、そんな怠惰な時はどこかに吹き飛んでしまった。 いつも何がしかを考え、考えていない時は手足が動いている。 気の効いた詔というのは一体どんなものだろうか…まわりを見渡し、相談できそうな人を探す。 コルベールに…は期待できそうにもない。 ヴィオラートもなんというか実用派で、文章を装飾するという考えからは程遠いだろう。 キュルケは…儀式とか礼飾をあまり好きではない。タバサ…はどうだろうか。 いつも本を読んでるし、案外あっさりと良い言い回しとか過去の名文を教えてくれるかもしれない。 そんなことを考えながらタバサを漠然と見ていたルイズに、キュルケが声をかける。 「ルイズ、それは何?」 キュルケは、ルイズの傍にある『始祖のオルゴール』が気になっているようだ。 「これは『始祖のオルゴール』っていう国宝なのよ」 ルイズは説明した。 「なんでそんな国宝をあなたが持ってるの?」 ルイズはまた、キュルケに説明した。アンリエッタの結婚式で、自分が詔を読みあげること。 その際、この『始祖のオルゴール』を用いる事…等々。 「なるほど。この前のアルビオン行きの成果ってわけね。こないだ発表された、 トリステインとゲルマニアの同盟が強化され、二つの国は名実共に同盟国となる、と」 ルイズはちょっと考えたが、ほぼばれているのに隠す意味はないと思い、こくりと頷く。 「アルビオンの新政府は不可侵条約を持ちかけてきたそうよ?あたし達がもたらした平和に乾杯」 ルイズは気のない声で相槌をうった。その平和の為に、アンリエッタは好きでもない皇帝の下へ嫁ぐのである。 仕方のないこととはいえ、明るい気分にはなれようはずもない。 「ところで…それは何を作ってるのかね?」 愉快なヘビくんによる自動水汲み装置と描かれた設計図を弄り回していたコルベールが問いかける。 コルベールの指差す先には、何かの設計に頭を悩ますルイズの姿があった。 「カリヨンオルゴルっていうアイテムです。周囲の敵を魅了したり、破壊したり… 高度な技術を必要とするだけあって、強力な効果が得られるようです」 「ほう。ミス・ヴァリエールはいつのまにか高度な技術を身につけているようだね」 「…褒めたって何も出ませんよ」 照れているのか、わずかに顔を赤らめながら顔を背けるルイズに、コルベールは確信を持った声で言った。 「わずか数ヶ月で、このような装飾品を…複雑な機構を持った細工に挑戦しようなどという生徒など、 私の知る限りにおいて存在しません。自信を持ちなさい、ミス・ヴァリエール」 「そ、そうですか」 言うべきことを言ったコルベールと、黙り込んだルイズ。工房の中に、おのおのの作業する音だけが響き渡る。 静寂を破ったのはまたもキュルケだった。 「ところで、ヴィオラート」 「なに?」 「明日から休みだし、行きたいところがあるんだけど」 「行きたいところ?」 「ゲルマニアではね…平民でも、お金さえあれば 貴族になることができる。 でもそれは、裏を返せば貴族でも文無しは用なしっていうことでもあるの」 「?」 「だから、宝探しに行こうと思ってるんだけど…」 「宝探し?」 「ええ。遺跡とか、洞窟とか…」 「遺跡…」 ヴィオラートはかつて遺跡を巡り、錬金術書を集めた体験を思い出した。 「一緒に行かない?あなたがいれば心強いし、何ならゲルマニアで本当の貴族になっちゃうのもいいかもしれないしね」 キュルケは返事を待たずに、テーブルの上に地図を並べ始めた。地図の山盛りがテーブルに現れる。 「それで、これがその候補地なんだけど…どこから行く?」 「…これから調べる?」 タバサがあきれて、キュルケに向き直った。 「だって…売れないから処分するって言うから、まとめて金貨十枚で引き取ったやつだし…」 キュルケはばつが悪そうにそう答える。 「大丈夫なの?」 改めて考えると、だんだん不安になってきた。 「うーん そう言われると…これなんか見るからに新品の紙だし…」 キュルケが地図の山に手を突っ込んで、確認を始める。 作業に戻ろうと思っていたヴィオラートの目に、飛び込んだものがあった。 「あ…」 不審に思ったキュルケがヴィオラートに問いかける。 「どうしたの?」 ヴィオラートは珍しく動揺した様子で、震える指先を地図に向けた。 「そこに…あたしの名前が書いてある」 「え?…どこ?ざっと見たけど、貴女の名前はなかったような気がするんだけど…」 「違うの、あたしの世界の文字で書いてあるんだってば!」 五人の視線がその地図に集中する。 「え?これって、ヴィオラートさんの世界の文字なんですか?」 シエスタが反応し、目を見開いてヴィオラートを見つめた。 「え、何、まさかあなたも何かあるって言うんじゃ」 「これ…私、見たことあります!」 「え?」 「この…ヴィオラートさんの名前の下にある文字のどこかに、竜の砂時計って書いてありませんか?」 「え、ええと…あるみたいだね。竜の砂時計って…」 「はい、ただの壊れた砂時計…だと思うんですけど…祖母が大切にしていたものなんです」 シエスタのその言葉に、ヴィオラートたちは思わず顔を見合わせた。 「ふーん、この地図には『謎の古代文字』ってあるけど…これはけっこう信憑性高いんじゃない?」 「ええ、ヴィオラートさんの世界の文字ということは、祖母の世界の文字ということですから… この、『竜の砂時計』って文字は、私が祖母から唯一教えてもらった文字なんです!」 興奮気味に語りだしたシエスタ。この文字について共有できる初めての人ができた事が、 よほど嬉しかったのだろう。 「まさか全部本当の事だっただなんて…この文字が書かれたものは他にもありますから、 ヴィオラートさんの助けになると思います」 そこまで効いたキュルケが皆を見回して、宣告するように発言した。 「決まりね。タルブへ行こうか?」 その言葉にヴィオラートはしっかりと頷き、ルイズに問う。 「ルイズちゃん、一緒にタルブへ行こうか」 すると、ルイズはカリヨンオルゴルの設計図とにらめっこしながら答えた。 「すぐに帰ってくるんでしょう?私はとりあえずこれを完成させることにするわ。詔も考えなくちゃいけないし」 「とりあえず、私も作業があるので…それに、私が残ってないと学院的にはまずいらしいですからね」 コルベールは、新発明の設計図ににこまごまとした線や注意書きを付け加えながら、そう答える。 「一人だって、完成させて見せるわ」 出会った当時とは全く違う、まっすぐなルイズの瞳に見つめられたヴィオラートは、 心の中でルイズに祝福を贈りつつ微笑んで、決めた。 「じゃあ…行こっか?」 「そうこなくちゃ!じゃあ準備して、出発よ!」 翌朝、一行は空の上でシエスタの説明を受けていた。 シエスタの説明は、あんまり要領を得なかった。 とにかく、村の近くに寺院があること。そこの寺院に『竜の砂時計』が存在している事。 「『竜の砂時計』って…マジックアイテムなわけ?」 キュルケの問いに、シエスタはいいにくそうに答える。 「そんな…大したものじゃないと思ってたんですけど…しょせん壊れた砂時計ですし、 何でもドラゴンの角が使ってあるらしくて、それだけでも珍しいってありがたがって… 拝んでるおじいちゃんとかいますけど」 「へぇええ」 「祖母はある日ふらりと私の村に現れたそうです。そしてその…『竜の砂時計』を持って、 『神の浮船』で私の村にやってきたって、みんなに言ったそうです」 「『神の浮船』?」 「ええ。誰も信じなかったらしいですけど…祖母は頭がおかしかったんだって、皆言ってます」 「どうして?」 「誰かが言ったんです。じゃあ、その『神の浮船』を見せてみろと。でも、 もう呼べないとかれんきんじゅつしはどうとか色々言い訳して、その後は私の村に住み着いちゃって。 剣が使えたので、頼まれては魔物退治とか護衛とかの仕事をして一生懸命お金をためて… そのお金で貴族にお願いして『竜の砂時計』や自分の持ってきた道具に『固定化』の呪文までかけてもらって、 大事に大事にしてました」 「変わり者だったのね。さぞかし家族は苦労したでしょうね」 「いえ、それ以外では働き者のいい人だったんで。村の皆には変わり者扱いされながらも、頼りにされてました」 「うーん、できればその『竜の砂時計』を触ってみたいんだけど…大丈夫かな?」 話を聞いていたヴィオラートが、とりあえず聞いておこうと発言する。 シエスタはちょっと考えた後、破顔して答えた。 「ええ、それだけなら全然問題ないと思います」 「なら…作り方がわかったら、真っ先にシエスタちゃんに教えるからね」 「え、ええ!?私にですか!?」 「うん。この村で錬金術がわかるのはシエスタちゃんだけでしょ?」 「そ、そうですけど、私なんかが…」 「嫌なの?」 「そ、そんな、嫌ってわけでは…」 「なら、決まりだね。頑張って、竜の砂時計を村の名産品にしちゃおう!」 「は、はい!頑張りますっ!」 ヴィオラートの誘導に見事に操られ、 シエスタは未来を決めるような誓いを立てさせられたのであった。 さて一方、こちらは魔法学院。 ルイズは完成させたカリヨンオルゴルをひっくり返して、しきりに不思議がっていた。 「何で…鳴らないのよ。ドラムは回ってるし、振動板もちゃんと弾かれてるのに…」 以前のルイズならばただ落ち込んでいるだけだっただろうが、 今のルイズは結果には原因があり、少なくとも大まかな原因なら自分が解明できるはずだと考えていたのだ。 少なくとも失敗の原因を調べようとする気概があった。 「どこか不具合でもあるのかしら…妙な魔法効果でも発現しちゃったかな…」 そう呟いて何気なくドラムを指でなぞった時、何か懐かしい音が聞こえたような気がして、 ルイズは思わずあたりを見回した。 「…気のせいかしら。ヴィオラートが戻ってくるまでには、失敗の原因ぐらい解明しておきたいけど…」 コルベールが既に退出し一人になった工房の中で、ルイズはもう一度カリヨンオルゴルを総点検し始めた。 ヴィオラートは目を丸くして、『竜の砂時計』を手に持っていた。 ここはシエスタの故郷、タルブの村の近くに建てられた寺院である。 そこにこの『竜の砂時計』は祀られていた。 『固定化』のおかげか、かつての姿…輪の一部だけが欠けた姿を、『竜の砂時計』は保っている。 キュルケは興味なさそうにその『竜の砂時計』を見つめていた。 好奇心を刺激されたのか、珍しくタバサは興味深そうに見つめている。 ヴィオラートがあまりにも、呆けたように『竜の砂時計』を見ているので、シエスタが心配して言った。 「ヴィオラートさん、どうしたんですか?何か、まずいことでも…」 ヴィオラートは答えない。ただ、感動したように『竜の砂時計』を見つめるばかり。 「ルーンが教えてくれた。これは…時間を越えるアイテムだよ…」 あたりを、重い静寂が包み込んだ。 「時間を越える!?」 驚愕したキュルケの声が響く。 「ちょっと…時間を越えるって、そんなのありなの?」 「うん…あたしも信じられないけど、時間を止めたり、未来や過去に行ったりできる。壊れてるけど…直せると思う」 そこまで言うと、ヴィオラートはシエスタに向き直って、言った。 「シエスタちゃん」 「は、はい?」 呆然としていたシエスタははっとなって、ヴィオラートを見つめ返す。 「あなたのおばあちゃんが残したものは、他にあるの?」 「えっと…後は大したものは…お墓と、たしか日記があったはずですけど…」 「それを見せて」 シエスタの祖母のお墓は、村の共同墓地の一角にあった。墓石には、墓碑銘が刻まれている。 「祖母が自分で書いた銘を元にこの文字が彫られたそうです。何て書いてあるのか、わからなかったんですけど」 シエスタが呟いた。ヴィオラートはその銘を読み上げる。 「剣士エスメラルダ、異界に眠る」 「!!やっぱり!祖母の名前です!これで、間違いありませんね!」 シエスタははしゃいでヴィオラートの手を握ると、振り返って言った。 「じゃあ、日記も持ってきますね!ちょっと待っててください!」 「ふう、予定より二週間も早く帰って来てしまったから、皆に驚かれました」 シエスタはいそいそと手に持った日記をヴィオラートに手渡す。 シエスタの祖母がつけていたものだろう。 『破壊の像』の持ち主と同じ、過去の異世界からの闖入者。ヴィオラートと同じ、異邦人。 ヴィオラートはシエスタから受け取った日記を、注意深く、しかし手早く調べ始める。 「あった、神の…浮船…」 「神の浮船って、知ってるんですか?」 「知ってるよ。この世界だと小さな船は普通にあるみたいだけど…すごい大きな空飛ぶ船なんだ」 「そんなに大きいんですか?」 「アルビオンで見た船の…何倍だろ?あたしの世界の、神の食卓っていう山の上に降りてくるだけなんだけど」 ページをめくりながら、ヴィオラートは懐かしむように言った。 「近づいたらいきなり大砲を撃ってきて…死ぬかと思ったなあ」 「え…その…そんな巨大な船と戦ったわけ?一人で?」 キュルケがあきれて、ヴィオラートに問いかける。 「さすがにそれはないよ」 「ああ、そうよね。いくらあなたでも、それほど無謀ではないわよね」 「うん。友達二人と一緒に戦ったんだ。逃げられちゃったけど」 「…三人で?」 「三人で」 キュルケとタバサは絶句して、この錬金術師の言う事は本当なんだろうか…いや本当なんだろうな…と、 今までのヴィオラートの行いを勘案しながら、自分を納得させた。 その間もヴィオラートは日記を斜め読みして、世界や自分に関わる記述がないかどうか調べ続ける。 ふと、ヴィオラートの目が止まる。 「あたしの名前がある…!」 日常の中に、突然ヴィオラートの名前が現れたのだ。日付は…ちょうど八年前、今日のこの日。 「未来から来たという錬金術師、ヴィオラートに託した…壊れたものでも、直せるという… 彼女は『これで帰れる…』と呟いて砂時計の光の中に…あの壊れた鈴が彼女の役に立った事を祈る…」 その日の日記はそこで終っていた。次の日は、またいつもの日常生活が綴られているようだ。 「帰れるかもしれない…」 今まで漠然としか見えなかった希望が、現実となった。 「決めたよ」 ヴィオラートは皆を見渡して、力強く言い放つ。 「この『竜の砂時計』を直して、エスメラルダさんに会いに行く」 ルイズのいない今、ヴィオラートは自分の世界に帰る決意を固めた。 前ページ次ページゼロのアトリエ